「びしょびしょだわ…」


瞬くんの補習の前に、清春くんにやられてしまった水鉄砲。なんとか顔は避けたもののスーツや中のシャツは濡れてしまった。

とりあえず職員室にタオルを取りにいこうと廊下を引き返せば瞬くんの姿が目に入る。


「瞬くん、」

「あぁ先生、今から補習に……」


手洗い場に居た瞬くんは私の姿を目にして言葉をつまらす。


「な、どうしたんだその格好!びしょびしょだぞ!」

「ちょっと清春くんにやられちゃって…」

「また仙道か…。それにしても…っ」


眉を潜めた瞬くんに苦笑いしながら、ふと瞬くんの手元をみれば水の入ったコップ。


「なぁに、それ?」


指差して問えば、いつの間にか瞬くんは固まっていて…。


「おーい、瞬くん?」


手を伸ばせばビクッとする。


「っ!わ、悪い、その、なんだ…あぁ、これはうがいをしようと…!」


明らかにおかしい様子を不思議に思いながら、そうなのと返せばいきなり冷たい水が降ってくる。


「え」


降ってきた水は、コップから。瞬くんの持っていたコップの中の水。

つまり、瞬くんが私に…?


「瞬くん!!?なにするの!」


びっくりしたのと、なにか怒らせたのかという不安とで瞬くんに怒鳴れば、我に返ったように瞬きを繰り返す瞬くん。


「わっ、すまない先生!俺はなんてことを…!」

「は?」

「悪気はなかったんだ、ただ…その濡れた服を見てたらアンタには水が似合うなって…それで」


突然意味のわからない弁解を始める瞬くんの顔は真っ赤で。


「あの、悪気がないのならいいのよ?清春くんと違って故意がないのなら…」

「コイ?!俺がまさか恋など…」


またしても顔を真っ赤にさせる瞬くんは、そう残してコップを持ったまま走っていってしまった。


「ど…どうしたのかしら。」



瞬くんの行方が気になるのも確かだし補習もしなければだけど、とりあえずは2人のオバカさんたちにびしょびしょにされたこの服を着替えようと職員室へ足早に戻ることにした。





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