「センセ〜っ!」
補習を始めようと教室に入った途端に聞こえてきたいつもの声とハグ。
「悟郎くん!急に抱きついて来ちゃ…」
ダメでしょ!って怒ろうとして気付く。悟郎くんの顔が涙で濡れていることに。
「ふぇえん!センセ〜…パウがねー、いなくなっちゃったの!」
「パウが?」
涙の理由を聞く前に自分で話しだした言葉にビックリする。
「みんなもポペラ探してくれてるんだけど全然見つかんないんだよ!」
とりあえず悟郎くんの体を引き離そうとするもなかなか離れない悟郎くん。
「ご、悟郎くん?パウ探さなきゃ…」
「ゴロちゃん不安なんだもん、もうちょっとだけこうしてちゃダメ?」
上目遣いで見つめてくる悟郎くんはそれはもう女子顔負けのかわいさで…。
「(ってダメよ!悟郎くんは男の子!)」
自分に言い聞かせてる間も、悟郎くんは私の肩に顔を埋めてくる。
「ちょ、悟郎くん!」
「ゴロちゃんパウいなきゃ生きていけないよ〜…ぐすん」
「悟郎くん…」
やっぱりすごく不安なんだ。
ここは担任として生徒が落ち着くまで側にいないとだめよね。
そう思い直して悟郎くんを抱き締め返し、頭を撫でたとき…。
「ワンッ!」
「え?」
「あ………」
後ろのロッカーからいきなり飛びだしてきたのはパウそのもの。
ビックリする私の目の前では汗をたらりと流す悟郎くん。
「もうパウってばー!これからいいとこなのに出てきちゃダメでしょー!?」
その言葉ですべて悟った私は悟郎くんをじっと見る。
「あはは……センセぽぺら怖いよ〜」
「悟郎くん!!!!!!」
そのあとの補習はいつもの3倍。
「ゴロちゃんがロッカーあけるまで出てきちゃだめだよっていったのに。絶対パウ確信犯だよー!」
そんな言葉に、貴方もね。と心の中で小さく言って丸つけを続けた。
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