「…悠里、こっち…おいで」

テストの採点をしている悠里を呼ぶとペンをとめて僕のほうを振り向いてくる。


「どうしたの瑞希くん?」


おいでおいで、と手をこまねけばハイハイをしてこっちにくる悠里。
そんなかわいい悠里を両手を伸ばしてつかまえる。
つかまった悠里は僕の腕の中で不思議そうに見つめてくる。

「瑞希くん?」

「…キス、したいと思ったから。」

悠里の髪を掬って口付ける。


「もう、瑞希くんったら…。」


そう言いながら顔を赤くする悠里の唇に触れようとしたとき。


─♪♪♪

「……」

「……」


悠里のケータイが鳴った。悠里は気付かないフリをしてるみたいだけどそれでも気になるみたい。

「……悠里、…電話。」

そう言いながら頭をなでてやると申し訳なさそうに僕から少し離れる。

「ごめんね、瑞希くん。」


「……ん」



本当は離したくないし電話なんてほっといてほしい。でも悠里を縛りたくはないから。ね、トゲー。

クケーと鳴くトゲーの頭を悠里の替わりに撫でる。




「もしもし。あ、真田先生!」


ピクッ



真田…?
前言撤回だよ、トゲー。僕といるときにあの子犬と電話だなんてやっぱり、ダメ。



「…悠里。」


電話をしている悠里の背後に回って首筋に顔をうずめる。

「……みっ、瑞希くんっ!」


悠里はビクッとしながら電話の向こうに聞こえないように小声で制止する。


でもそんなんじゃやめてあげない。だって悠里は僕のものだから。



「ね…、悠里。…大好き。」









(瑞希くんのバカ!)(うん…怒るのは、あとで。)





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