今日は衣笠先生の誕生日。
学校内では、女子生徒や葛城先生が一日中騒いでいた。
当の本人は、何も変わった様子もなく「また年を取っちゃいましたねぇ〜。」だなんてニコニコしているだけだったけど。



「あ、衣笠先生。今からお帰りですか?」


生徒達のプリントの整理を終えて顔をあげると荷物をまとめる先生が目に入った。


「えぇ、雨も降っていますし。明るいうちに帰ろうと思いまして。」


「そうですね。…わ、でもすごい荷物ですね、全部プレゼントですか?」


先生の手には溢れんばかりのかわいらしい包みや紙袋。


「ふふっ、そうですよ〜。あまりにもたくさんもらってしまいましたので、2日に分けて持って帰るんですけどね。」

「す、すごいですね…」


そう返したあと、隅に置かれたいくつかのラッピングされた箱が目についた。


「先生、アレも持って帰るんじゃないんですか?」

尋ねれば衣笠先生はそっちをみて、あぁ。と言った。


「アレは持って帰りませんよ〜。きっと中身は清春くん特製のオモチャ、でしょうから。」

「えっ!そうなんですか!?」

「見ればわかりますよ、ふふっ」



先生はそう笑うけど全然私にはわからない。
やっぱり、恐るべしだわ衣笠先生。



「あっ、そういえば、」

「?なにか忘れ物ですか?」


一通り荷物まとめが終わったらしい衣笠先生はこっちを向かってどんどん近づいてくる。



「はい、忘れ物です。」

「あ、あの……?」

「どうしましたか?」


どうしましたかっていうか、なんか、ものすごく近いんですけど!

椅子に座っているから逃げることもできず、至近距離にある先生の顔を直視せずひたすら下を見ていれば。



「…南先生にはプレゼント、もらってないんですよね。」

「え?」

「ですから…、」


衣笠先生の発言にビックリして顔をあげればおでこに柔らかい感触。


「これくらいはいいですよね?」


押しあてられたのはまぎれもなく先生の唇。それに気付いた途端、私の顔の温度はみるみる上昇する。


「きっ、きぬがさっ、せんせい!?」

「ふふふ、やっぱり南先生はかわいいですね。」


そう微笑んだ衣笠先生は、私に手を差し出す。


「…え、えっと…?」


まだなにかされるのかと少し身構えれば、衣笠先生は困ったように笑った。


「怖がらせてしまいましたかねぇ?一緒に帰ろうと思ったんですけど。」


「別に怖かったわけじゃなくて!ビックリしたっていうか、その…、」


「嫌でしたか?」


「いっ、嫌じゃ…ない…です…。」



嫌じゃなかった。衣笠先生におでこへキスされたこと。恥ずかしいけど誤解はしてほしくなかったから。



「本当…貴女はかわいいですね。」


「え?何か言いましたか?」


「いえ。さて帰りましょうか。」



そのいつもと変わらない素敵な笑顔をみて少し鼓動が高鳴った気もしたけど、それに気付くのはまた別のお話。




「…お誕生日おめでとうございます。」











♯おめでとうございます!
 こんなのですいません……





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