「なぁ、悠里。」
「うん?なぁに?」
「悠里はなんで学校の先生になったんだ?」
悠里は初めて会った頃から先生だし、今まで特に聞いたこともなかったからふと気になって聞いてみた。
「教師になることは、高校3年生で決めたの。」
「高3で?」
悠里はそのときのことを思い出したのか表情が柔らかくなった。
「あのね、私が高校3年生のときの担任の先生がとても魅力のある素敵な先生で、私もこんな教師になりたいなぁって。」
目を細めて懐かしそうに語る悠里。
「へぇ、どんな先生だったんだ?」
「すごく生徒を理解してくれて、でもただ甘やかすだけじゃなくちゃんとした道へ導いてくれる、どんな生徒でも見捨てない、すごくいい先生だったわ。」
俺もそんな先生、知ってる。
その先生ってやつを思い出してんのか、優しい笑顔を浮かべる悠里にそう言おうとしたとき。
「それでね、先生とは思えないくらいかっこよかったのよ。」
笑顔のまま悠里から発せられた言葉。
「そうね、雰囲気的には鳳先生ってとこかしら?」
まだその先生を懐かしんで楽しそうに話す悠里。そんな悠里を引き寄せて腕の中に収める。
「えぇっ急になに?!」
「先生の話はもう終わりな。」
「終わりって、一くんが聞いたんじゃない。」
確かに俺がどんな先生だったかとは聞いた、けど恋人に他の男を目の前で誉められるのはちょっといい気分じゃねぇしな。
「そ、そんなの相手は先生よ?」
「そんなん俺と悠里だって元は教師と生徒だろ?」
「う、それは…。でも先生とはただの教師と生徒だったわ!」
「でも悠里はかっこいいって思ってたんだろ。」
ああいえばこういう俺に悠里は、もう!と言って拗ねちまった。
少し頬を膨らませてそっぽを向くなんてほんとつくづく子供だよな、まぁ俺も人のこと言えねぇか。
「…でも俺、その先生に感謝してんだぜ?」
「……感謝?」
突然の言葉に少し驚いて疑問を浮かべる悠里の頬を撫でる。
「そりゃちょっとは嫉妬するけどよぉ、まぁ相手は教師だろうが男だしな。」
「だから…!」
「でも悠里の教師っていう夢を与えてくれたのはその先生なんだろ?」
悠里が教師を目指さなかったら俺は貴女と出会えてねぇんだ。
「一くん…」
「それに、悠里がいい先生だっつってたその教師像、まんま悠里だしな。」
そうだ。もし悠里がこの先生に影響されてなかったら、教師にもなってなかっただろうし、俺たちB6をあんなまでして面倒みてくれてなかったかもしれない。
「だから、な。感謝してんだよ。」
そう言って額にキスを落とす。
「一くん、ありがとう。」
なんでか礼を言う悠里の顔を覗き込めば目にいっぱいの涙を貯めて。
「それ…、最高の誉め言葉だよ。」
今日一番の笑顔を浮かべた悠里。
─生徒を理解してくれて、
─ちゃんとした道へ導いてくれる、
─どんな生徒でも見捨てない、
そんなサイコーの先生を俺はこれからも愛していこうと、その笑顔を見て強く思った。
#悠里先生はいい先生です、捏造万歳!
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