悪戯な顔、優しい手つき、甘い声。
いつもと同じなようでいつもと違う。
――ピピピッ!
無機質な音で目が覚める。
カーテンの隙間から差し込む朝日。
「……夢、か」
のそのそと寝室からでてきた清春は目がまだ完全に開いてなく、それでもキッチンの悠里のもとへとしっかり歩いてくる。
「おはよう、清春くん。」
それに気付いた悠里は清春にコーヒーを渡す。それを受け取り、流し込む清春は急に顔をしかめた。
「ウゲェ!悠里、てめっ!これブラックじゃねぇか!」
「へ?」
完全に目が覚めたらしい清春は、横にあるお茶を飲み干しす。
「ごめんなさい、ちょっとボーッとしちゃってて…」
そんな清春を見て落ち込む悠里。それを見た清春はいつもらしくない自分の恋人に手をのばす。
「お前が抜けてンのはいつものことだ。」
「ひっ、清春くんっ!」
伸ばした手の先は悠里の鼻を摘んでぐりぐり。
「ケド、んーな顔してンのは何かあったからダロ。」
「何かって、」
「言え。」
いつになく真剣な目で覗き込まれて、悠里は戸惑いながらも話しだす。
「清春くんが、夢に…でてきたの。」
「俺が夢にィ?」
「うん、それで起きてみても清春くんが居るから。まだ少し現実と夢が区別ついてないみたい。」
にへら、と笑う悠里に清春は心の中で何かを覚え、グイッと悠里を引き寄せた。
「わっ、清春くんっ?」
「…夢ン中の俺と現実の俺、どっちがイイんだよ、ゆーりチャン?」
確実に夢の中の自分へ嫉妬しはじめた清春。しかし悠里はそんなことに気付くはずもなく。
「えぇ?何それ。」
「いーからさっさと言えっつの。」
「んー、悩むなぁ…」
「悩んでんじゃねぇよッ!」
即答しない悠里にいじましく思った清春はさらに腕に力をこめる。悠里が痛がらない程度に。
「夢の中では、清春くんと2人だけだったの。…他の人は誰もいなくて、私だけの清春くん…みたいな。」
語尾は小さくなりながらも清春の胸の中で説明する悠里。
「…バーカ、んなモン夢じゃなくてもそうだろーが!」
少し腕を緩めて悠里の顔をのぞく。
「現実の俺サマだって、お前のモン以外になる気はネェ。」
「…うん、それなら、こっちの清春くんがいい。」
そう言うと今度は悠里から、清春に思い切り抱きつく。そんな可愛い恋人にどうしても口元はゆるんでしまって。
「それに、夢ン中じゃできねぇこともあんダロ?」
ガマンできなくなったのは、ゆるむ口元だけでなく。清春は悠里をそのまま横抱きに抱えて今でてきた寝室へ戻る。
「えっ!ちょっ!何考えて…!」
「ゴテーネーに今日は日曜だ!」
「そっ、そういう問題じゃ!」
バフンっとベッドに降ろされる悠里。その目には、夢ではない悪魔の姿。
「それに、夢より現実の俺サマのほうがイイってことを教えねぇとナァ。」
「いっ、いらない!」
迫ってくる清春に、やっぱり夢の中の方がいい!と心の中で悪態。
けれどそんな思いも、あと少しすれば悠里から綺麗に消えてしまうのでした。
♯ブラック飲めない清春萌えな話(違)
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