ガッシャーン!!!
「!!?悠里っ、」
キッチンから大きな物音を聞き付け、慌てて彼女の名前を叫びながら駆け付けた清春の目に写ったのは白い粉を頭からかぶった悠里の姿。
「ったく…なーにやってんだヨ、てめぇは!」
悠里に合わせてしゃがんでやり、その白い粉を払ってやる。
「お塩、上のほうにあって…」
「ンーなこと俺サマに言えば取って……って、今塩っつったか?」
「え?えぇ、言ったわ。」
払っていた白い粒を舐めれば、やはりしょっぱい。塩だ。
「ってめ!何でケーキに塩なンだよ!」
今日は自分の誕生日。そして悠里は清春へ誕生日ケーキを作っているところ。
「だって、塩は甘さを引き立てるっていうじゃないの。」
ケロッとして言い張る悠里に頭を抱える清春。
ハァ、とため息をつく清春に「む、向こう行ってて!」と悠里はキッチンから清春を追い出そうとするが。
「ケーキなんかいらねぇ。」
そう呟いた清春にいきなり抱えあげられる悠里。
「なっ!ちょっ、清春くん!」
「暴れンなブチャイク。」
ジタバタする悠里をソファーへ降ろす。
「俺サマはあんなキミョーなケーキなんかより、プレゼントが欲しい。」
「プレゼントって…」
「プレゼントはかわいー悠里チャン、だろ?」
ニヤニヤしながらグイグイ迫ってくる清春にこの上なく赤くなった悠里は慌てて否定をする。
「ちがっ!プレゼントはちゃんと用意してるの!」
ソファーの上にある鞄からゴソゴソ小さな箱を取り出す悠里。そんな様子をみた清春は少しムッとして悠里から離れる。
「はい、清春くん」
「お誕生日おめでとう。」
ニコッと笑ってラッピングされた箱を渡す。そんな悠里に少し照れながら、サンキュと受け取る清春。
「…ネックレスか?」
「どんなのがいいか、わからなかったけど…清春くんに似合うと思ったの。」
シルバーを基調とした真ん中にリングや飾りがついてあるモノ。
「清春くんって、ほら、女の子にもてちゃうし。少し不安になったりするの。でもそれ付けててくれたら、あぁ清春くんは私だけの彼氏だなって思えるっていうか…その、」
俯きながら何を言っているかと思えば…。
「お前って」
「そんな所有物めいたの、嫌よね…」
勝手にいいだして勝手に解釈して勝手にシュンと落ち込む愛しい彼女を力いっぱい引き寄せた。
「バァカ、俺サマはいまスゲェときめいてんダヨ!」
「と、きめく?」
「オゥ!そりゃあ?こーんなかわいい俺サマの悠里がそーんなかわいい理由で首輪、くれたんだからナァ!」
いつの間にやら自分の首につけたネックレスに見せ付けるようキスをする。
「首輪っ?!違うわ!」
「アン?一緒だろ。」
「……それで、ときめいてるの?」
「あぁ、超ときめいてンな。お前ってばほんとーかわいい。」
そう耳元で囁かれれば、悠里はもう作りかけのケーキのことなんてすっかり忘れてしまって。
「清春くん…」
そのケーキの代わりに悠里自身がおいしくいただかれたとか。
――清春くんは私だけの彼氏。
幸せそうに横で眠る悠里を見て、清春は悠里の言っていたことを思い出した。
首もとには、自分が彼女のモノだという証。
それを外し、リングだけをチェーンから抜き横で眠る悠里の左手薬指へはめる。
(俺だって同じだってェの。)
リングをはめた指へキスを落とし、目を瞑った。
#清春スキダ!スキ≠話が上手
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