大学の授業も終わり、早く悠里の待つ家に帰ろうと広いキャンパス内を抜けているとき、見つけた。
それぞれ自分の行きたいところへ進む学生たちとは別に、まわりをキョロキョロしている女性。
その姿を俺が見間違うはずも、見落とすはずもなく、愛しい彼女のもとへ走った。
「悠里っ!」
「えっ?あ、一くんっ!」
いきなり声をかければ驚いてこっちを向く。俺の顔を見て安心したのか、ホッとした顔。
「どうしたんだよ、今日は悠里んち行くって言ってただろ?俺が行くまで待てなかったか?」
意地悪くそう聞けば顔を赤くさせる悠里。
それでも肯定しない悠里を不思議におもって今度は真剣に聞く。
「なんか理由があんのか?」
「べ、べつに理由というか…」
「あるんだな?」
わざわざ俺のところまで来てくれたことはすげぇ嬉しくて、だからその理由だって当然に聞きてぇんだ。
「なぁ、悠里、言って。」
わざと耳元で小さく言う。
「っ!そ、そんなの、反則だわ…」
「はやく。」
急かせば、うぅ…とかわいく呻いて口を開く悠里。
「あのね、清春くんが、」
「清春?」
悠里の口から出た男の名前に反応する。
「…一くん、大学で女の子たちにもててるって…清春くんが言ってたの。」
「俺が?」
「……うん」
清春のやつ。またいらねぇこと悠里に吹き込んだな。
でも、その話を間に受けて悠里がいまここに来ているんだとしたら。
「で?それが今の行動となにが関係あんだ?」
ニッと笑って聞く。
「わ、わかってるんでしょう、どうせ!」
「俺、バカだからわかんねぇな。」
悠里の頬に手を添えてやさしく尋ねれば、観念したのか目をつぶって言葉を紡ぐ。
「……みんなに、一くんの彼女はわたしだって…見せ付けたくて、」
最後は消え入りそうなほど小せぇ声。顔はもうりんごみてぇに赤くなってて。
「ククッ…」
予想どおりだったが、あまりにかわいい考えに笑ってしまった。でもそれは俺が今すげぇ嬉しいから。
「なっ!なんで笑うの!」
これでもかってくらい顔を真っ赤にさせて怒る悠里。そんな悠里もかわいくて、愛しくて。どうしようもなくなったからおもいっきり引き寄せちまった。
「んなこと考えねぇでも、俺の彼女は悠里だけだろ?」
「はじめ、くん…」
あぁもう!なんでこんなにかわいいんだアンタは。
「そんなことが気になんなら、ここでキスでもするか?」
悠里はバカっ、と慌ててるけど結構俺は本気だったりするんだぜ?いまだって、俺の悠里を見ている男子学生が居るんだからよ。
そんな男たちの目に触れないように、悠里をぎゅっと抱き締めた。
(どっちかっていうと、俺のほうが心配だけどな。)
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