――四月の始め
桜が満開を迎えたある日曜日。
美形6人(1人は美女ともとれる)と1人の女性、そして1匹のトカゲが桜の木の下でわいわいと騒いでいた。
「ふむ。やはり桜はこのBeautifulな俺によく似合っているな。」
「え〜!かわいいゴロちゃんのが似合ってるよ〜!」
「まぁまぁ二人とも落ち着けって。」
「次の曲は桜をテーマにでもするか。」
「ナァナちゃん♪毛虫も参加ってカァ?」
「…清春、生き物に乱暴…よくない。」
「トゲーッ!」
6人と1匹が好き勝手に行動し、しゃべる中ひとり着々と準備をしていく悠里は彼らを見上げながら微笑んだ。
B6が卒業して1ヵ月。それぞれの道に進もうとしている6人は翼の花見をしたいという思い付きによって再び集まった。そこで全員一致した意見が、1ヶ月前まで自分達の面倒をみてくれていた元担任も誘うということだ。
「みんな、座って。今日のためにたくさんお弁当を作ってきたのよ。」
もちろん悠里はその誘いに喜んで応じた。だから1日前から手によりをかけたお弁当を用意してきたのだ。
しかしその大量のお弁当をみて固まる6人。そんなことに気付かない悠里は楽しそうにおかずの説明をはじめる。
「おにぎりは定番でしょ?あと卵焼きは少しこげちゃったけど、唐揚げはうまくできたのよ!」
そんな悠里をよそにひそひそと相談をしだす。
「ゴロちゃん、あんなの食べたくないよ〜!」
「相変わらずだな先生…はは」
「ヒャハハー!あれのどっこが卵焼きダヨ!」
「なぜ唐揚げがあんなに真っ黒なんだ…」
「shit!山田をつれてくるんだった。」
「…僕……いらない…。」
思い思いに感想を残し、悠里から遠ざかる6人。それに気付いた悠里は、さぁ食べましょうと言わんばかりの笑顔を彼らに向ける。その笑顔に断れる人間はその中には居らず……。
『い、いただきます…!』
「召し上がれっ!」
結局全員そのお弁当を口にすることになり、その様子を悠里はワクワクしながら見守っていた。
「オイ、ナナァ!食えヨ。」
「なっ!お前が最初に食べろ!」
「おいおい、ケンカすんなよお前ら。」
「じゃあハジメが食べなよ〜」
「えっ!そ、それは……」
誰も手を出せない状況が続く中、誰かのお腹がグーと鳴った。
「……翼。」
「What!?何だ瑞希、俺ではないぞ!」
急に瑞希に名指しされて慌てる翼。
「なんだ、翼くん。お腹空いてたのね!みんななかなか食べないからお腹いっぱいなのかと思っちゃったわ!」
その言葉に、ヒヤリとする翼にニヤリとするその他。5人が一斉に「お腹いっぱいだ」と言おうとした瞬間、5人のお腹が同時に鳴った。
「あら、みんなそんなにお腹空いてたのね!たくさん作ってきたから遠慮せずにどんどん食べてね!」
クスクスと笑う悠里の周りで、6人は6人とも自分の腹の虫を恨んだ。
「チッ、オレ様一生の不覚だゼェ…!」
「ふぇぇん!ゴロちゃん食べたくないのにー!」
「し、死にはしねぇよな?さすがに…」
「これは金で買ったもの、これは金で買ったもの…」
「一口食べてNOなら山田を呼ぶ。」
「…トゲー、頑張ろう…」
そんな元生徒達を見ながら悠里は、1年前のちょうどこの頃を思い出して微笑んだ。
あの頃は、全然先のことなんて考えられなかったけど…1年経った今彼らはすごく成長した。
(1年前の私に教えてあげたいわ。)
桜が舞い散る中で悠里はそう思いながら自分の作ったおにぎりに手を伸ばしたのであった。
(なぜおにぎりがカラフルなんだ!)
(具材を擦り込んでみたの!)
(((!!!?)))
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