毎日毎日イタズラされているんだから今日くらいは仕返ししたっていいわよね?なんたって、今日はエイプリルフールなんだから。


でもエイプリルフールなんて清春くんの日みたいなもの。そんな日にやすやすと清春くんが私の嘘にひっかかるかしら?

きっとひっかからないと思うけど清春くんのびっくりした顔を見たい一心で用意をした嘘。


(言ってみようかな?)


どのタイミングで言いだそうか迷っていると清春くんと目があった。


「な〜ンだァ?さっきからチラチラみてきてェ。まーたオレ様の顔に見惚れてンのかァ?」


ニヤニヤする清春くんに、コホンと咳払いをしてずっと考えていたその嘘を告げる。


「き、清春くん。落ち着いて聞いてほしいの。」

「アァ?なんだヨ改まって。」

「…私、アメリカの姉妹校に転勤が…決まったの。」

「は?」

「だからもう清春くんと一緒に住めない…。」

「!?」



清春くんが一瞬止まった。
やった!驚いてくれたわ!でもどうせすぐに笑って…


「(え…!?)」


でもそこにはニヤニヤしたいつもの清春くんの顔なんかなくて、驚いたままだった。


「あの、清春くん?」


逆に驚いてしまった私は清春くんのほうに手を伸ばすとその手をひっぱられあっという間に清春くんに抱き締められた。


「ちょ、ちょっと?」

「いつだヨ?」

「え?」

「いつ行っちまうンだよ!」

「いつって…その、」


回っている腕がギュウギュウと強く抱き締めてきて、切羽詰まったような清春くんの問い掛け。それに圧倒された私は嘘だと言うタイミングを逃してしまった。


「…ンーな はえーのか?」

「あの、待って、」

「オレ、お前が居ねェとこれからどうやって生きていきゃあイイんだヨ?」

「き、よはるくん」

「もうオレは悠里ナシじゃあ生きていけねぇンだ。毎日お前の顔を見ねぇと生きた気がしねぇンだよ。」


次々と耳元で甘い言葉を囁かれて私は完全に打ち明けるタイミングを失ってしまっていた。


「お前と離れたくねェ。」


その清春くんの言葉を聞いて罪悪感でいっぱいになった。はやく、嘘だって言わなくちゃ。


「あのね、清春くん…」


いまだにギュウギュウとしてくる清春くんの肩に手を置いて剥がす。


「う………うそなの!」


思きってそう言うと、清春くんは再び驚いた顔。


「ごめんなさい、まさか信じちゃうと思わなくって…」

「…」


黙ってしまった清春くんに必死で今日がエイプリルフールだと説明すると、


「悠里、今日何日だヨ。」

「え、だから、4月…」

「ホントーにか?」

「?どういう意味…」


よくわからないことを言う清春くんの手にはケータイ電話。そのケータイ電話の画面に写っているのは今日の日付。


「さんがつ、さんじゅういち…」


3/31 確かにそう写っていた。

そっ、それなら私が今日はエイプリルフールだと勝手に勘違いしてただけ?!だから清春くんは信じて…。


「清春くん!ほんとにごめんなさい!私てっきり今日がエイプリルフールだと思ってて…。」


「ほんとだよナァ!オレ様のいたいけなココロを弄ぶなんてヒデェー話だぜ。」



当然ながら清春くんは怒っていて、今日は普通の日だから怒られても仕方ないわけで。


「お詫びに今日はなんでもするわ!」

「アー?ほんとかヨ。」

「もう嘘なんてつかない。」

「キシシッ、よーく言った!悠里!今日1日はお前に拒否権はねぇからナ!」


そう放った清春くんの顔は今までとは打って変わったあのイタズラを思いついた笑顔で迫ってきた。

迫ってくる清春くんから後退りするとリモコンを踏んでしまってテレビがついた。


『いやぁ、今日はエイプリルフールですからね〜』


テレビから聞こえてきた声に私たちは同時に止まる。


「きょう…がエイプリルフール?」

「チッ、バレたか。まぁ問題ねぇダロ!お前はさっきオレ様になんでもするっつったしィ、嘘はもうつかねーっつったもんナァ。」


ペラペラと言葉を並べる清春くんは今までに見たことないような、獲物を捕まえたような笑顔だった。




(もう、エイプリルフールなんか!)






全ては子悪魔の計画どおり



♯むしろ悪魔





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