今日は瞬くんとデート。普段あまり街にでたがらない瞬くんとこうやってショッピングをするのはとても新鮮で、楽しくて嬉しくて。ついついいつも以上に心が弾んでしまう。
「瞬くんあれ見て見て!」
「あっ、悠里。」
目についたアクセサリーショップにあるものを見つけて駆け寄る。瞬くんは私を追い掛けてきて私の目線の先にあるものを見る。
「……ネックレス?」
「うん。これこの前ね、翼くんが雑誌で付けてたのよ。すごく綺麗ね。」
そう説明すると瞬くんはよくネックレスを見ながら「確かに綺麗だな。だからこれは真壁のデザインじゃないだろうな。」と笑った。
そんな瞬くんを笑うと目にあるものがとまる。
「次は何を見つけたんだ?」
瞬くんがそれに気付いて私の視線の先を追おうとするから慌てて瞬くんに向き合う。
「なんでもない!」
「?…いいのか?」
「うん!わっ、わたしお手洗いに行ってきてもいいかしら?」
半ば強引に瞬くんをそこに置いてトイレに走った。
鏡の前でハァとため息をつく。ばれてないわよね?私の視線の先にあった、指輪のこと。
あんなの見てたら瞬くんにねだってると勘違いされちゃう。瞬くんだったら買っちゃいそうだし…。
(でも…綺麗な指輪だったわ。)
ハッ!何考えてるの私!節約家な瞬くんにあんな高いもの買わせるわけにはいかないのに。
そう言い聞かせながら瞬くんのもとへと戻る。
余計なことは忘れて瞬くんとのデートを楽しまなきゃ。
「ね、瞬くん、次はあっちのお店行きましょう!」
「悠里、ちょっと」
「あっ、でもあっちもいい雰囲気だわ!」
「悠里、」
「あそこにお店なんかあったかしら?行ってみない?」
「悠里、待て。」
すっかりお店を巡ることに夢中なった私の手首を掴んで呼び止めた。
びっくりしたあと、怒らせたのかとおもって瞬くんの顔をおずおずと見れば困惑した顔でこっちを見ている。困らせちゃったわ…。
「瞬くん、その…ごめんなさい。」
素直に謝ると手首から手を離して代わりに反対側の左手をとられる。その間なにも言わない瞬くん。やっぱり怒らせちゃったかしら?
そう思っていると瞬くんは口を開く。
「悠里、…あまり俺から離れないでくれ。」
「え?」
「色んな店を見つけて走る貴女を見ていると、なんだか悠里が離れていくような気がして。」
思ってもいなかった瞬くんの言葉に唖然としていると彼は急に顔を赤くさせる。
「あ、貴女はすぐ迷子になるからな。心配なんだ。」
「…じゃあ、手つないでくれるかな?」
恥ずかしいけど握られている手で瞬くんの手を握り返しながらそう言うと瞬くんは一瞬びっくりしてすぐにほほえんだ。
「もちろん。…でももっといいものがあるんだ。」
「もっといいもの…?」
意味がわからなくて瞬くんを見ればなにかをポケットからだしていて。
「あ……これ…」
それは見ればすぐに何かわかった。だってこれはさっきまで私が見ていたモノ。
「貴女がどこかに行ってしまわないように、付けていてくれるか?」
瞬くんには気付かれないようにって見ていた指輪。それがなぜかいま瞬くんによって私の指にはめられている。
「な、なんで…?」
「悠里のことなら俺が一番わかっているつもりだが、違ったか?」
そう言ってくれる瞬くんが愛しい。指輪を眺めて「ありがとう」と言えば指輪をはめた手をにぎってくれた。
さっき、瞬くんは私がどこかに行ってしまわないようにと言ったけど、きっと指輪がなくたって私は瞬くんから離れないんだろうな、と思いながら握られた手を強く握り返した。
♯ナナは難しいな
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