「合宿?」

「オゥ、3週間〜!」


右手でピースをつくる清春くんから聞かされた報告。

話を聞くとどうやら、プロのなかでも強豪選手たちが選抜された合宿らしい。そこに清春くんが呼ばれているだなんてすごいし、口には出さないけど清春くんもうれしそう。もちろん私も応援したい、けど。


(3週間か、…ちょっと長い。)


付き合いだしてから毎日のように会っているから3週間も全く会わないのは初めてかもしれない。


「ンー?どーした悠里〜」

「え、べつにっ!」


なんとなく、3週間会えなくなると考えていることに気付かれたくないと思った。

だけど清春くん、やっぱり察しはいいみたい。



「キシシッ、悠里ちゃんはァ〜オレ様と3週間も会えなくなるのが寂しいンだよナァ?」


ニヤニヤしながらそう言う清春くんはさすが小悪魔と言われていただけあるわね、悪魔の羽としっぽがみえるわ。


「そっ、そんなことないわ!せっかく清春くんのチャンスだもの。清春くんが頑張っているのに寂しいわけないじゃない。」



なんて少しウソ。

確かに清春くんのチャンスを喜ばないわけないけど正直3週間も会えないのは寂しい。

私は、いつからこんなに欲深くなったんだろう。彼の成長を素直に喜べないなんて。清春くんにこの気持ちがバレてしまわないように精一杯隠す。



「んーな訳ねぇだろこのブチャ。」


でも清春くんはやっぱり気付いてしまう。
懐かしい呼び名に反応する前に伸びてきた手が私の両方のほっぺたを軽くつねる。


「ひっ!ひはーひっ!」

「ヒャハハー!ぶっちゃいくー!」


ほっぺたをぐにぐにさせながら笑っていた清春くんは気が済んだのか手を離して急に真剣な顔になった。


「寂しいなら素直にそう言え。」

「だからっ……!」


今までとは違う真面目な顔で見つめられると言葉に詰まってしまう。


「いっくら隠したってナァ、オレ様にはわかンだよ。」


そう言う清春くんから顔を背けて「私は寂しくないって言っているでしょ」と言ってみても離してはくれず耳元に口を寄せて囁かれた。





「俺の方が知ってる、お前のこと。」






そんなことを言われたら自分の気持ちを隠すことなんてもうできなくなっちゃう。











(寂しくないってのは嘘。)(素直になれヨ、悠里チャン?)





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