掴まれた手首に幼い体温を感じて、俺はまたこの後輩から年齢という距離を開いた。













「真田、誕生日おめでとう」

「おめでとう弦一郎」


部室は賑やかで朝練から騒がしく、しかし怒る気にはなれなかった。彼等の好意を無駄にするのは嫌だったのだ。


「真田副部長ーっ」

「赤也か、どうした」

「どうしたじゃないッスよ!お誕生日、おめでとうございますッス!」


どこか、いつもより話し方が明るく胡麻でも擂っているのかと思ったが、赤也のその笑顔にそんな影は見当たらなかった。


「ゆきむらぶちょー〜」

「うん?なんだい赤也」

「副部長、借りてくッスよっ!」


幸村と半ば睨み合いながら意味のわからないことを赤也が言った。考える暇もなく、手首がまだ幼い体温に包まれ俺の視界は気がつけば校舎裏。


「…っ、なにをする赤也…」

「へへっ、たまには俺に付き合ってくれてもいーじゃないッスかぁ」


いまだ包まれたまたの手首から赤也が震えていることに気付いた。


「赤也?要件は何だ」

「ぁぁ…、ふくぶちょう…」

「はっきりしろ」


俯いては顔を上げ、を繰り返し、やっと震える口を開いた。





「副部長は…、また俺から離れて行くんスね…」

「は…?」


震える手は力を増し骨が軋んだ。




「俺を置いてくんじゃねぇよ…っ」


赤也はゆらゆらと濡れた瞳を擦った。


「あか…」

「ぜってえ追い付いてやる!逃げんじゃねーッスよ!」


そう吐き捨て、逃げるように部室に戻る赤也の背中を見て、まだ温もりの残る手首を、赤也と同じように包んだ。







ーendー



皇帝に花束を様提出真田誕でした。
誕生日を生かせていないお話orz
真田お誕生日おめでとうございます!



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