この前のお話
それから、忍足は屋上に来るのを止めた。
俺はまだ、屋上で大空を眺めている。
自分で望んだこと
忍足と俺は別れた。俺が、別れさせた。
別に、忍足が嫌いな訳じゃない。寧ろ今でも好きで好きで仕方がない。
けれど、別れたんだ。俺が耐えられなくなったから。忍足の申し訳無さそうな顔を見るのが、俺は辛いと知ったから。
俺と忍足は、それはもうモテる。俺達への黄色い声は絶えない。
そんな二人が付き合い出したのだ。それが噂になっていなかったとしても傷付く人間は増えたわけだ。
まあ、俺は何とも思わなかった。俺には女共が傷付こうが知ったこっちゃない。
けれど忍足は違った。
忍足は優しいから。優しいから故に女共全て平等に接し、優しいから故に女共が傷付くことを嫌った。
俺と付き合い始めて、忍足は女共の誘いを必ず断るようになった。必ず申し訳無さそうに。
俺にはそれが理解出来なかった。努力すら出来なかった。
それを忍足に問うたとき、忍足は「無理にやる必要ないで?俺の自己満足やから」と苦笑した。
きっと俺と付き合っている間、忍足は必ずその表情をする。
それは、耐えられない。
だから、付き合うことを止めた。
それが俺の自己満足でしかないことは気が付かなかった振りをして。
あいつの居ない屋上が、こんなにも寒いとは思わなくて、それが全て俺が望んだことだなんて。
そう思うと涙が出た。
この後のお話
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