※比呂士誕と繋がってます。
比呂士誕読破後に読むことをおすすめ致します。









ピン、ポーン

「やぎゅう〜」

ピンポーン、ピン、ポーン

「開けてくんしゃーい」

ピンポンピンポンピンポン

「ひろしくーん?居るんじゃろ?なあ〜」

ピンポンピンポンピンポンピンポンピン…ガッ

「柳生ひろ痛いッ!」

絶え間なく響く呼び出し音を途切れさせたのは、堅い物同士がぶつかる音だった。
すると静かな金属音が響き、亜麻色の髪と楕円形の眼鏡が覗いた。
…半分だけ。

「柳生、なんで直ぐ開けてくれないんじゃ〜、寒いじゃろ」

今は十二月。
仁王は決して厚着ではない。
寧ろ薄着である。

「…知りませんよ、あなたは自業自得という言葉を知らないんですか」

柳生は溜め息混じりに言葉を投げかけた。
仁王は口を尖らせ、「知らん知らん」と視線をずらした。

「で、なんでチェーン付けとるんじゃ?」

「あなたを家に上げる必要が無いからです」
「ひどい!雅治君泣いちゃう!!」

勝手にして下さい、と柳生は目を細めた。
すると、チェーン越しの部屋の奥から、聞き慣れた声がした。

「やぎゅー?何、仁王来てるんかィ」

「ええ、なぜ「なんで丸井がおるんじゃ!!?」

ガシャン、とチェーンにしがみつく様に、仁王は部屋を覗いた。

「ジャッカルが最近冷たくてよィ、柳生に相談に乗ってもら「まさかそんな二人がそんな関係だったなんて俺は知らん知らんぞ」

「話聞けィ」

丸井の説明に聞く耳を持たず、仁王は被害妄想の様な独り言を行っている。
それに呆れた柳生が口を開いた。

「まあそういう事です。潔く帰りたまえ」

「…っ、い、いやじゃ!」

「は?」

予想以上に幼い返答に、柳生は眉間にシワを寄せた。

「おまんの誕生日んとき家来とくれたじゃろ、だから今日は俺がおまんの家きたんじゃ。少し位ええじゃろ!」

「…」

少し嫌そうな顔をしたが、柳生はドアのチェーンを外した。

「流石俺ん柳生じゃ」

「惚気は止めろィ」

「惚気てません」


 ◆ ◇ ◆


「柳生さん柳生さん」

「なんでしょうか仁王くん」

「ぷれぜんと」

「…催促ですか」

「うるさいやい」

正反対の表情の二人を後目に、丸井は一人ジュースをすする。

「一体なにが欲しいんです?」

「優しくして」

「いつだって私は優しいでしょう」

「ありえん」

「…one more please」

「なんでもありません」


異様に明るい笑みを浮かべた仁王と、陶器の様な笑みを浮かべた柳生は正反対だ。

「仁王、マゾかよ」

「わんもあぷりーず」

丸井はジュースの残りを音を立てて飲んだ。






某M氏の憂鬱
12/4#仁王誕

(君の言葉は全て愛だと)
(マゾヒストは考える。)

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