(のう、柳生)

(なんですか?)

(誕生日何欲しい?)

(あなたが私に物を呉れるという事です?)

(いいから答えんしゃい)

(そうですねえ…、強いて言うなら―――……‥)


数日前にした会話が、脳内を遮った。
今日は私の誕生日だ。


仁王が人に物をあげる事が、どうしても想像出来ない。
ましてや人の誕生日を祝うなど。


そんな事を考えていると、不意に誰かに肩を叩かれた。


「はい?…っ!?」

振り向く拍子に頬に何かが触れた。


「仁王くん…、何の嫌がらせでしょうか」

「お前さん、肌きれいじゃの」

「はい?」


未だ頬に触れたままの仁王の手を「いい加減やめたまえ」と軽く叩いた。


「お前さん、今日誕生日なんじゃってな」

「数日前あなたからその話をしたでしょう」

「そうじゃったかの」


そう言って仁王は目をそらした。


「それで、用件はなんですか?」

「…今日家に来んか?」

「私が…ですか?」


仁王は目をそらしたまま小さく頷いた。


「何故?」

「…言うたじゃろ」

「何をです?」

「お前さん、時間が欲しいって言うたじゃろ」

「ああ…」


((そうですねえ…、強いて言うなら…時間が欲しいです))


数日前の会話がまた。


「確かに言いました。ですが何故私があなたの家へ?」

「じゃから、時間をやる言うとるんじゃ」

「意味がわかりません」

「じゃから、俺とおる時間をあげる言うとんじゃ!」


…は?


「それはあなたの望みでは?」

「…プピーナ」


柳生は小さく溜め息を吐き、普通行くのは逆だろう、と再び溜め息を吐いた。






君と歩む時空間。
10/19#比呂士誕

(君の吐息が秒針と重なり)
(狭い空間に響きわたった)

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