「んあ…」
視界に広がる白い景色。
ここは、保健室。
今日は10月4日。
俺の誕生日。
その所為か、いつもの雌猫共が大騒ぎ。
耳障りな声がいつも以上に響き、気分を悪くした。
白いカーテンに日光が反射するのが眩しくて、目を細めていると、保険医の女がカーテンを割いて覗いた。
「随分寝てたわねえ、もうお昼よ?」
「そうですか…」
「気分はどう?」
「朝よりかは、」
「そう、もう少し寝ていく?」
「そうします」
保険医は少し笑って視界から去った。
いつの間にか、日光の眩しさを忘れていた。
―――――――――――……‥
跡部はなかなか寝付けなくなっていた。
きっと忍足は、自分を探しているのだろう、と思って。
まだ跡部は今日、忍足と会っていないから。
「おしたり…」
忍足が自分を探して走り回る光景を想像し、再び目を伏せ眠りに落ちた。
――――――……‥
(けいちゃん、けいちゃん…っ)
(おしたり?どこ?おれはここにいるよ…っ)
はやくきて、はやく、はやく…
――――――……‥
忍足が俺を探す夢を見た。
夢の中は暗くて、白くて眩しい現実に逃げ出した。
目を開いて見えた世界は、白い背景に黒が映え、決して眩しくはなかった。
「景ちゃんみーっけ」
「おしたり…?」
「おめでとさん」
そっと、キスを落とした。
モノクロームキッス
10/4#景吾誕
(黒は闇には映えないから)
(君は明かりの下にいて、)
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