灰色の空。
打ち付けるような雨が、テニスコートを濡らしていた。
コートの傍の建物の陰、そこにヘアバンドの少年。
雨宿りをしている様に見えるが少年はテニスウェアを着ていて、体育座りをした足元にはラケットが置いてある。
どうやらテニスをしに来たようだ。
「おい」
濡れた、黒髪の少年が、ヘアバンドの少年に歩み寄り声をかけた。
「貴様もテニスをしに来たのか?」
「ん、ああ。…君、誰?」
「俺は真田弦一郎だ」
「俺は幸村精市。よろしく」
すると真田は、「ああ、よろしく」と、幸村の隣に腰をかけた。
「ここに来たのは初めてか?幸村、」
「ああ、あいにくの雨だけどね」
「昨日は晴れていたのだがな」
そう言って、真田は灰色の空を見上げた。
「いいんだ、もう」
幸村が吐き捨てるように言った。
「どういう…意味だ?」
真田が幸村の顔を覗いた。
「俺、まれにいる雨男なんだ」
真田は、きょとんとした顔で幸村を見つめた。
「だから…あんまり外でテニスした事がなくて。今日もどうせできないと思った。そしたらやっぱりね…」
幸村は空を見、あきれた様に笑った。
「もう、雨なんて嫌いだよ。大嫌い。」
「俺は、好きだぞ」
「え?」
幸村は真田を凝視した。
「雨は、見ていると心が静まる。それに、
貴様は雨が似合うと思う」
雨が、
止んだ気がした。
雨のち初恋、恋時雨。
(次また君に、会うときは)
(きっと眩しい、青空の下)
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