「ばーーーーーーーーーーかっ!」
アイマリーユー!
「柳生、好いとーよ柳生。愛しとう。愛しとうよやーぎゅ」
「…」
「あいらぶゆー、柳生らぶじゃー」
「……」
「やーぎゅーうー」
「黙りなさい」
「つれないのー」
そんなやり取りが半時間程続いている。その間私は仁王雅治と目を合わせていない。しかしながら読書ははかどらなかった。
やはり、愛を囁かれるということはどうも落ち着かない。
「柳生、嬉しくないんか?俺に愛されて」
「な、嬉しくなんか…」
「嬉しくなんか、なんじゃ?」
前髪が当たるくらいに顔が近い。目を逸らせないことがどうにも悔しくて、にやにやと笑う猫のような仁王の顔を音が鳴る位に叩いた。
「いっつ〜、凶暴な紳士様じゃの〜」
仁王はまるで嬉しいというように緩みのない顔をした。
「うっとうしいんですよあなたは…っ」
そんな《うっとうしい彼》の隣が好きだなんて。けれど彼の顔を見て私はよくわからない恐怖に似たものが込み上げてきた。
笑みなんてなくて、苛立ちに似たものすら感じ取れたんだ。その顔からは。
「仁王…く…」
「俺かて、辛いんじゃけ」
暗いトーン。暗い表情。こんな仁王くん、私にはわからない。
「柳生はいつだって俺を邪魔くさく扱うんもん。俺かて、ボロボロなんじゃよ」
ボロボロ。それは精神的にだろうか。
「なあ知っちょる?柳生、俺に『好き』言うたこといんじゃよ?なあ俺ら付き合っとんのとちゃうん?俺は柳生ん恋人とちゃうの!?」
「仁王くんっ、そんな…」
「柳生と居ると、辛い…っ」
仁王くんは本当に辛そうな顔をしていて、私はどうしようもなく悲しくなった。
「柳生が俺んこと好かんならっ、嫌い言うてや、嫌えばええん…」
「ばーーーーーーーーーーかっ!」
「へ?」
私は仁王くんが好きです。嫌いな訳がない。嫌える訳がないのに。
「ばかばかばか仁王くんのばかっ」
「え、ちょ、柳生?」
仁王くんはキョトンと目を丸くした。《好き》だなんて二文字の言葉では伝えきれない。
「なに勝手に私の気持ちを操作して、なに勝手に落ち込んでるんですかっ!ばか、本当にばかですね…っ私は…」
「…、?」
「…、ばか、ばか、ばかばかばかばかばか、ばーーーーーーーかっ!」
あ、この言葉も二文字だった。
アイマリーユー!
(訳:私はあなたと結婚する)
タイトル乙。
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