風の靡く、いや風が身体に体当たりしてくるような病院の屋上。黄昏る俺と真田。
無言で空を見上げると涙が出そうだ。だって空は青すぎる。ああ、それでは空がかわいそうだな。俺は空の青さに感動した、そういうことにしよう。


「はーあ、人生って詰まんないなー」

「何を言う、つくづく可笑しな奴だお前は」


あーーっと声を出し空に向かって大きく口を開ける。なんという開放感。空ってこんなに広いんだ。

空に向かって、口だけでなく腕まで広げていると風に身体を押されて俺の身体は病院の硬い肌に倒れ込む。
真田が焦ったような顔をしたのが面白くて大笑いすると真田はほっとしたように溜め息をついた。





「空、ひっろ!」

「ああ、そうだな」





四肢を投げ出して空を見上げていると俺がタンポポの綿毛みたいにふわふわ飛んでいってしまいそうだ。
支配されるものがないって凄い気持ちいい。いっそ綿毛になりたい。けど俺がどこかにいってしまうのは寂しいな。

きっとみんなもさみしいだろうし。





支配されたい、かも?






「真田あ」

「む、なんだ幸村」

「俺を支配して」

「は?」


また俺は真田の顔に吹き出しそうになる。


「シュルレアリスム画家のダリって知ってる?」

「一応知っているが…」

「別に俺は抽象画には興味ないんだけどさ、ダリの奥さんのガラは、ダリにとってミューズでありマネージャーであり支配者だったんだとさ」

「そ、それがどうしたというのだ…」

「お前は俺にとってミューズだし、マネージャーとは少し違うけれど、右腕みたいなもんだ。だからお前も××××××…」


びゅうううううと凄まじい風が俺の声をかき消して、真田は眉間にシワを寄せた。


「今何と言ったのだ」

「だから×××――」


ああ煩い風だな、黙っていてくれ。


「だからお前も!」


腹から声を出して、叫ぶ。


「ガラみたいに俺の支配者になってくれよ!」











「貴様は、ダリにも勝るような変人だな」

「そりゃどーも!」








ダリの鎖

(愛情は優しくない)










□わたくしにしかわからないような内容のお話でしたすみませんわたくしはダリが大好きですすみませんんん




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