「俺は、柳生のもんじゃ」
束縛パラノイア
「俺は柳生にしか触らせん。柳生にならなにされてもええ」
「なら、殺してさしあげましょうか?」
「な…、」
「嫌でしょう、それでは『なにされても』ではありませんよ」
「……っ」
柳生は俺のことなど見向きもせずに本のページを捲る。そしてまた俺のことなど居ないかのような、独り言じみた声量で呟いた。
「殺しさえしなければ、何をしても構わないのですね」
「へ…?ああ、そうじゃ」
「ああ、そういえば」
ぱたん、と無機質な音を立てて本が閉じられる。やっと俺を見たかと思うと、すぐに視線を自らの手元に落として話し始める。
「いつだかのアメリカで、ジェフリー・ダーマーという男が犯罪者と成り果てました」
「お、おお…、?」
「彼は17人もの人間を殺害しました」
「……」
「彼は被害者の頭にドリルで穴を開け、酸を流し込んだのだそうです」
「どうして」
「どうしてだと思います?」
柳生の表情は、部屋の中心で光る照明の所為で眼鏡が反射しよく伺えない。けれどどうしてか笑っているように思えた。本当に、どうしてかはわからないが。
「酸で脳を破壊し、性的暴行にも抵抗しないゾンビを造りだそうとしていたのです」
眩暈を覚えた。柳生がこんなにも悪趣味で吐き気がするような話を、聖母に祈るかのような穏やかな表情で話していることに。
「………」
「あなたに、やって差し上げましょうか?ジェフリーが被害者達にしたことを」
「はっ?」
「そうすれば、あなたは永遠に私のゾンビになれますよ」
―fin―
あとがき▼
いきなり悪趣味なお話ですいません。
先日購入した本にそのジェフリー・ダーマーの話題がありまして、興味深い内容でしたので彼等に餌食になって頂きました。
因みに、ジェフリーは実在する人物であり本当にあった事件です。
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