「真田はどこに行ったんだい、どうして見舞いに来ないのさ?」
「幸村くん…我が儘言っちゃあいけねぇだろぃ」
「丸井には言われたくない言葉だね。柳生、真田は?お前にならわかるだろう?」
「ええ、一応はわかります」
「それで、真田は?」
「次の大会のエントリー表などの書類と委員会で配布する為の資料作りをする為来れない、だそうです。明日は来るかと…」
「明日?明日なんてどうでもいいんだよ!今日が大事なの、真田はっ、毎日ここに来なきゃいけないんだよ!」
「真田くんだって忙しいのですよ、ご自分の我が儘がいつでも通るとでもお思いのようですが、甘えるのも大概にすべきですよ」
「柳生…っ、お前」
「幸村」
「…ッ、なんだい仁王…」
「そう柳生にあたるんじゃなかよ、柳生の言うことは正しい」
「…、なんだいなんだい…、いい気になるなよ仁王…柳生もね…!」
「…。帰るぜよ柳生」
「ええ、失礼します」
「逃げるのかい」
「逃げるもなにも、あなたとお話しするのに少々気分を害しましたので、帰るだけです」
「く…っ、勝手にしなよ…っ」
「それでは」
「…ふん」
「…くくっ」
「なんだい柳、何が可笑しい」
「いいや、何も」
「嘘を言うんじゃないよ」
「嘘じゃないさ。ただ笑ってしまっただけのことだ」
「随分と幸せなようだね」
「それは違うさ、滑稽なだけだよ」
「滑稽?滑稽なのはお前のその顔だ」
「ふ…、随分と幼稚な言いぐさだな」
「黙れよ」
「止めてくださいよ幸村部長!柳さんも!」
「黙れよワカメ。お前が止めることじゃないんだよこれは」
「な…っ、アンタ…、幸村部長じゃないみたいッスよ…」
「は?俺は俺でしかないんだよ」
「違う。俺はアンタみたいな餓鬼が幸村部長なんて認めねー。さいならっ」
「…どいつもこいつも……」
「では俺も、失礼しようか」
「早くそのむかつく顔を視界から退かしてくれよ」
「言われなくとも」
「…俺も、帰るぜぃ。ジャッカルもな」
「ああ…帰ろう」
「…早く…出ていけ」
「うん」
「なんだその目は」
「…」
「聞いてるの?」
「俺には…、今の幸村くんは馬鹿で幼稚な、我が儘な餓鬼にしか見えねえよ」
「……くそ」
「じゃ、じゃあな…」
「………みんな…、消えろ」
* * *
「うえ…く…っ、さ、さな…さなだぁ…うう…っさな、さなだ、さなだぁあっ」
見舞いに来た奴ら全員が帰った白い箱の中、俺は泣いていた。真田はやはり来ない。真田は今何をしているんだろうか。何を見ているんだろうか。
この世に生きている以上、真田の視界に映る人間は俺以外が大半である。それは、触れることも、話すことも同じで、真田は今、俺以外の誰と関わっているのだろう。
どうして?どうして真田は俺だけを見てはくれないの?その目玉えぐり出して、箱に仕舞ってしまえばいいの?お前をばらばらにして冷凍保存してしまえばいいの?
世界なんて俺とお前二人だけでよかったのに。どうして他の邪魔者が億単位で必要なんだい?
真田が手に入るのならば、俺は何も要らない。真田は俺の夢なんだ。俺にとって真田は幸せの基準なんだよ。
* * *
次の日真田は見舞いに来た。真田は今、俺の手の中小さな箱の中で俺だけを見ている。目玉だけが無い真田は白いシーツを赤く汚しながら呻いている。
これで真田は俺のものだ。
けれど、どうしてだろう。
夢が叶うことと、幸せになることは違うんだね。
真田、ねえ教えて。
幸せになる夢を見ることは、愚かなことなのかい?
かくも幸福であろう夢の話
(そのまま俺に幸福なんて来なかった)
a togaki>久し振りな気がする幸真です。真田一言も喋っていません笑
比呂士さんと柳がとても感じ悪い件。そんな比呂士さんが好きです。因みに最後のシーンはですね、部長が副部長の目玉をえぐり出してオルゴール的な箱に仕舞ってによによしてるんです。これまた悪趣味なお話すみませんでした。
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