……――――に、電車が参りま―…――







▼不覚にもピリオドは打たれた






もう直ぐで俺達が待っている線の電車が来る。それをわかった今俺がやることはひとつだ。弦一郎、失礼する。俺は目の前に居る弦一郎の背中を思い切り蹴り飛ばした。支えの無かった弦一郎は意図も容易く線路に墜ちた。可愛い可愛い弦一郎。ぺたりと無防備に線路に座り込んで、醜い点などどこにも無い。「…何をする蓮二……ッ」なんて言って睨み付けてきて、愛らしくて仕方がない。


――さなだ…―大丈夫か――…真田君――…―何して…だ―柳――きゃあぁぁあ――…―男の人が…―線路に――電車が―真田早く…―柳さ――


ああ、ざわざわざわざわ煩いな。大丈夫だ弦一郎。お前は俺に助けてと懇願し俺は「弦一郎!」と険しい表情で手を伸ばす。はは、完璧だ。我ながら素晴らしいシナリオじゃあないか。はは…ははは…!


「ふ…はは、は…っ」

「蓮二…、最低だな」


弦一郎は、驚く程冷静だった。冷たい目で静かに俺を睨み付けてくる。弦一郎?何故お前がそんなに冷たい目をするんだ。まるで俺が悪者みたいじゃないか。


「貴様の気持ちは重々承知した。俺はここで死のう」


俺の…気持ち?弦一郎何故だ何故そんな。俺はお前に殺意など抱いていない。だから早く上がっておいでよ、ねえ。抱き締めてあげるから。


――きゃぁあ、電車が!―…――


煩い音を立てて、電車は弦一郎の上を通ろうとしている。ああ、やめろ。来るな、来るな、来るな!


「真田!」


…な、何だ?精市…?精市が弦一郎に覆い被さっている?やめろ、そんな。お前も死ぬのか?二人で、死ぬのか?俺だけが残り、二人は心中だと?こんな滑稽なシナリオ、俺は立てた覚えは無い。なんて思いながら俺には迫り来る電車を前に線路に飛び込む勇気など無かった。ああ、もうお仕舞いだ。






「   、     」



精市が俺に何か言ったが、止まれと合図する周囲を無視して俺の前を通り過ぎた電車の雑音に掻き消され何一つ聴こえなかった。しかし皮肉にも俺には読唇術ならぬ才能が備え付けられていたかのように精市の言った言葉がわかった。わかってしまった。
全ての車両が通り過ぎ、弦一郎と精市が居たはずの線路には、さっきまで弦一郎と精市だった二つの肉塊と血溜まりと、ソレで汚れた二人の着衣と荷物があった。




ばぁか、ざまあみろ




e.n.d.




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お久しぶり立海です。どうして久しぶりに書いたものはみんな酷くなるのでしょうね。本当はこれ、小ネタのつもりで…って、前の28と同じ展開になっていました。短く書こうと思うとまとまらなくなります。
電車に引かれた体なんて、綺麗に潰れるわけ無いですが、綺麗な体を夢見て書いてみました。
とりあえずこれは柳がただの馬鹿って話です。



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