第三話


神様は、とことん私の事が嫌いらしい。



私は、休むこともできず、新しい命をもらった。

私の、いや、俺の新しい名前は、忍足謙也。

両親は、何の当てつけなのかまた医者、
でも、前の両親よりもやさしく、


………五月蠅い。



まぁ、前の親が静か過ぎたのもあるが、



「謙也ぁ、ッご飯やでぇ〜、おきやぁ」




なにせここは関西なのだ。




「……………ぁうあ、(もう起きとるわ………)」






俺は、どうやら転生をしてしまったらしい。
それも『男』に。




俺が神様に嫌われていると言うことは良く分かった。
正直に言って、生まれた瞬間は全てを否定しようと思った。
だけど、………



「ほうら、ご飯やでぇ、ぎょうさん食べや!!」




この人が、まるで壊れ物を扱うように、
優しく、俺を包んでくれたから、俺はもう少し、新しい世界に絶望するのを待とうと思えた。





……………そう、たとえ、
体の自由が利かず、
お風呂に入れられて体中洗われようとも!
母乳を飲まされようとも!!
オムツを替えられようとも!!!



我慢しようと思えたのだ。

……………思えた、のだ。




(やばい、前世と違う意味で死にたい………)














……………………………








まぁ、そんなことはもういい。


今はそれよりも、気になっていることがある。


それは、俺の名前だ。


俺の名前は忍足謙也。


そう、あの馬鹿な幼馴染みが大好きだった漫画、
『テニスの王子様』の登場人物、『忍足謙也』と同性同名、それも漢字まで同じだ。


ただの偶然にしては、少々話が出来過ぎている。

だが、偶然でないとも言い難い。


微妙なこの感じがかれこれ数週間続いている。


そして今日、俺の従兄弟が来るらしい。


安易な考えかもしれないが、もしもそれが『忍足侑士』であったなら、


俺は『忍足謙也』で、
本当の忍足謙也の命を奪って生まれてきてしまった事になる。


仮に私が『忍足謙也』だとして、
何の取り柄も無い私が、はたして彼の命を奪ってまで生まれてくる価値があったのか、
そう思うと、気の毒で仕方が無い。







[*prev] [next#]






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -