おいかけて、つかまえる | ナノ


  08


泉田先輩と連絡を取り合うようになってから、距離が近くなった気がする

忙しい人だし迷惑になるといけないから、頻繁には連絡しないけどそれでも1日に1度は必ず何かしらあるから嬉しい

私からだけじゃなくて先輩からも連絡してくれるのが本当に嬉しくて幸せで!

今日はある約束をしてるんだ!しかも二つ!
ドキドキするけど楽しみだなぁ


「やあ、山田さん」
「泉田先輩!お待たせしました!」
「待ってないよ」
「約束のモノです…お口に合いますように」
「ありがとう!嬉しいよ。さ、取り敢えず座ろうか」

話の流れで泉田先輩にお弁当を作る事になって、今日は一緒にお弁当を食べる約束をしてたんだ

数日前から身体に良さそうなレシピを調べて
バランスと彩りも考えて考えて…
練習もしたし、今日も味見したし多分大丈夫…なはず

「わぁ!凄い…!綺麗なお弁当だね。いただきます」

手を合わせてから先輩はお弁当に手をつけた
大丈夫かな?って心配だったけど
「凄く美味しいよ!山田さんはやっぱり料理が上手だね」
どれを食べても美味しい、って言って食べてくれる先輩はとても優しい

「大丈夫そうで良かったです」
「大丈夫も何も…本当に美味しかったよ。また食べたいと思ってしまう位」
「本当ですか!?また作っていいですか!?」
「ああ、山田さんが負担でなければまたお願いしてもいいかい?」
「是非!私は負担じゃないです。もっと色々勉強しときますね」
「ふふ。そんなに無理しないでね」

無理なんかしてないよ
先輩に喜んで貰えるならもっと美味しいの作りたいし
アスリートの人向けのお料理教室とかあったら通おうかなぁ
もっと上手くなりたいな

「それにしても、バランスも凄く考えてくれたんだね。高タンパクなオカズに野菜も沢山で。ボクのためにありがとう」

「いいえ…でも先輩はカラダづくりしてるし、ハードな運動もしててエネルギーも使うし…どんなのがいいかなって考えるの、本当に楽しかったんです」

「そこまで考えてくれたのか。有難いなホントに。山田さん、いいお嫁さんになれそうだね」

山田さんを奥さんに出来る人は幸せだろうな

なんて先輩がとんでもない事を言うから私は頭の中が真っ白になった

「どうしたんだい?黙っちゃって。大丈夫?」
「あ、いや大丈夫です…その、あの…泉田先輩だって」
「ん?」
「泉田先輩だって素敵な旦那さんになりそうですよね、優しいし、強いし。いいなぁ先輩の奥さんになれる人が羨ましいです」

テンパって変な事言った気がする……
でも正直な気持ちだよ
いいな、先輩が旦那さんとか…いいなぁ……

それにしても先輩何にも話さないなと思い先輩の方を見てみれば、先輩は顔を真っ赤にして固まっていた

「泉田先輩?」
「わっ!」

ツンと腕をつつけば先輩は盛大に驚いた
……やっぱり失言だったかな?

「先輩、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫、大丈夫だよ。ハハ。いきなり山田さんがあんな事言うから驚いたよ…お世辞でも嬉しかったけど」
「お世辞じゃないですよ!本心です、本心!泉田先輩のお嫁さんになれたらなぁって」

また先輩が固まってしまった!
……あれ?なんか間違えたかな?

何も言えずにいたら先輩がハッとした顔をして私の肩を掴む

「山田さん」
「は、はい!」

とても緊迫感溢れる先輩の顔に背筋が伸びる

「そう言う事はボク以外の……他の人には言わないようにね、いいかい?」
「はい!」
「絶対に、約束だよ?」

そう言って小指を差し出す先輩
この前の私達と逆だなぁ…って思いながら小指を絡めた

「約束します」

私がそう言えば「うん。いい子」って頭を撫でてくれて…
先輩は私を殺しにかかってるの?

いつもいつも…これ無意識だったらずるい!

「さ、教室に戻ろうか」
「あっという間でしたね。名残惜しいな」
「本当にあっという間だったね。でも今日はまだ約束があるじゃないか」
「あ、練習終わったら…ですよね?」
「そう。だからまたすぐ会える」
「待ち遠しいなぁ。部活も見させて下さいね」
「ああ、是非。さあ行こうか」

立ち上がった先輩が私に手を差し出す
その手を重ねたら引いて立たせてくれて

「ありがとうございます」

ギュッと手を握ると先輩の手の力も少し強くなって、お互いいつ離すかわからなくなって

結局予鈴が鳴るまで動けないでいたんだ


この時の出来事を黒田先輩に話したら「お前らそれでホントに付き合ってねーのかよ」って呆れられた上に盛大にため息までつかれてしまったのは泉田先輩には内緒

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