おいかけて、つかまえる | ナノ


   06


念願の泉田先輩の筋肉を触ったあの日

あの日は私にとって高校生活において最高の思い出の日と言っても過言ではない気がする
…まだ2ヶ月弱だけど

触ると服の上からでもわかるあの筋肉
私のお腹との違いが…凄かった…
胸も腕も凄くて……
制服の時はムキムキとかそんな風に見えないのに不思議だなぁ

練習の時のジャージ姿と制服の時の雰囲気の違い…どっちも好き!
ギャップ萌えだよね、ギャップ萌え

「よし出来た!」

朝からせっせと作っていたのは泉田先輩への差し入れだ

普段、食事に気をつけている泉田先輩は甘いモノは食べないと言うのを黒田先輩に教えてもらった

調理実習の時のお菓子を差し入れしても受け取って貰えないのか!とショックだった

どうしたものか…いっそうの事プロテインでも差し入れする?とか思ったけど何だか微妙

で、色々考えて調べた結果そういったカラダづくりをしている人向けのレシピもある事を知った私は、いてもたっても居られずにこうして朝から泉田先輩への差し入れを作っていたのだ

プロテインのクッキー
因みに小麦粉も砂糖も不使用の低糖質で高タンパクなクッキーで味もバッチリ!
ネットで調べたら出てきたレシピ…
本当にネット様様である

これなら受け取ってもらえるかな?
なんてドキドキしながらラッピングをする
ダメだったらその時は黒田先輩にあげよう…

朝練の後に渡せたらいいな、とそわそわしながら学校へ向かった


学校に着いたら丁度朝練が終わっていた所だった
黒田先輩にLINEして(この間交換した)、泉田先輩に会える様に頼む
了解、との返事が来てほっとしたのも束の間、泉田先輩がこっちに向かって走ってきてくれた

「山田さん!」

「おはようございます、泉田先輩!すみませんお時間とらせて」

「構わないけど…どうしたんだい?」

首を傾げながら優しい口調で聞いてくる泉田先輩に朝からキュンとする
それにしてもいざ渡すとなると緊張するもので、ちょっとぎこちなくなってしまったけど私は作ったクッキーを差し出した

「あの、これ…」

「これは?」

「あの、差し入れなんです…あ、でも!泉田先輩色々節制してるって黒田先輩から聞いたので砂糖とか入ってないヤツなんですけど…受け取って貰えますか?」

緊張して顔が見れない
困った顔をさせていたら申し訳なさで死にそうだ

「有難く頂くよ。嬉しいなぁ」

そう言って受け取って貰ったので思わず顔を上げたら、何だか凄く優しい顔で笑う泉田先輩がいて私はまた先輩に胸を撃ち抜かれた

「良かった…あの、プロテインのクッキーなんです!繋ぎは小麦粉じゃなくてオートミールとナッツで…」

私がテンパって話してもやっぱり優しく聞いてくれるから嬉しくて幸せでたまらない!

「色々考えてくれたんだね、本当に嬉しい」

「へへ、良かったぁ」

「ところで、このクッキーはユキにもあげるの?」

「へ?なんでですか?」

何でそこで黒田先輩が出てくるんだろう?
あげるなんて考えてすらなかったのに(泉田先輩に受け取って貰えなかった場合は別として)

「だってほら、ユキと山田さん仲良いみたいだし」

「え?仲良いのかな?そんな考えた事なかったです!いつも黒田先輩とは泉田先輩の話しかしないし」

黒田先輩も私も泉田先輩が大好きなんですよ

と泉田先輩を見れば泉田先輩は固まってしまった
ちょっと今日は暑いのか顔が赤いけど、大丈夫かな?

「泉田先輩?」

「えっ?」

と腕をつつけば、驚いていたのか大きく体を揺らした

「大丈夫…ですか?」

「あ、ああ。大丈夫。さあ、教室に行こうか」

そう言ってくれた先輩の隣を歩きながら校舎に向かえる幸せを噛み締めながら私はゆっくり歩き出した

「それにしてもボクの話って何を話してるんだい?特にユキは」

「え、普通に泉田先輩について教わってるだけですよ!この間は…」

たった数分でも私には大事で幸せな時間

ふわふわとする心と体が落ち着くには時間がかかりそうだけど、それが心地いいから私は暫くその気分に浸っていたのだった








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