おいかけて、つかまえる | ナノ


  05


「あ、黒田先輩!」
「なんだ、山田か」

こんにちはと笑顔で挨拶してきたコイツは塔一郎と同じ委員会の後輩で、最近はオレに気さくに話しかけてくる珍しいヤツ

「飲み物ですか?」
「まぁな。つか、それよりお前…この間塔一郎の筋肉触ったとか聞いたが…」
「そうなんですよ!凄く素敵でした…胸筋も腹筋も凄かったです」

はぁ…とうっとりとした表情を浮かべる山田を見てオレはため息をついた

「山田は塔一郎が好きなのか?」
「はい!大好きです!」

間を入れずハッキリと答えた山田の勢いに、オレは言葉を失いそうになったが辛うじて「そうかよ」とだけ返した

そこからの山田の話が長かった

いかに塔一郎がカッコイイか筋肉が素敵か語る語る

オレ、後輩なんかには割と取っ付き難いとか言われてんのにコイツはお構い無しだな

キラキラとした目を見て本気なんだと感じる

あの塔一郎の筋肉話を嬉しそうに聞ける女なんてコイツ位しかいないんじゃねぇか?

塔一郎はいい奴だし努力家だが、少し…いや、だいぶ癖があるからな

オレ達はもう慣れちまったが他のヤツ…
ましてや女子からしたら変に見られるかもしれない

だけど山田なら大丈夫なのではないかと思い一つある話をしてみた
これで大丈夫なら…コイツの事応援してやろう
っつーか何やってんだオレは

「あー。まぁ塔一郎はずっと筋トレばかりしていた時期もあったし、今でも筋トレはしっかりしてっからな。だから筋肉に名前も付いてるんだが知ってるか?」

「筋肉に…名前?」

「そうだ。右大胸筋がアンディで左大胸筋がフランク。因みに背筋はファビアンな」

頭にハテナを浮かべた表情をしているが大丈夫だろうか…なんて考えは杞憂に終わる

「えー!可愛いですね!何ですか名前も素敵!」

「因みに口ぐせはアブ」

「あ!ぶ!」

真面目な泉田先輩にそんなお茶目な所が!
と嬉しそうな顔をするコイツを見て応援する事に決めた

だってよ、あれが大丈夫なヤツってなかなかいねーし、塔一郎も満更でもなさそうだしな

なかなか彼女なんて出来そうもない塔一郎に春が訪れるかも…と思うと仲間として友人として嬉しいものだ


「ユキ、山田さん?」

ウワサのご本人登場ってか?

なんつータイミングだよ

大体オレと山田が2人で話してると絶対に!
タイミング良く現れるんだよ塔一郎は
何かセンサーでも付いてんのかよ!
オマエは山田のセコムかよ!

「泉田先輩!こんにちは!」
「こんにちは山田さん」
「あの、黒田先輩に聞いたんですが!筋肉の名前の話!」
「そうなのかい?」
「はい!素敵な名前ですね!アンディとフランクとファビアン…センスいいですね」
「ふふ、ありがとう」
「えっと…こっちがアンディですか?」
「そ、そうだよ!こっちがアンディで……」


あー…2人の世界に入っちまった

つーかさり気なく触ってやがる山田のヤツ
あれ男女逆だったら大騒動だっつーの

しかし…
山田も塔一郎もどんだけ楽しそうに話してんだよ
あいつらの会話、傍から聞いてたら意味不だぞ お花畑かよ!

あいつらの脳内どうなってんだよ

ったく

「先に行くぞ」

という声も聞こえていない2人にオレは呆れながら教室に戻った

さっさとくっついちまえ!



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