おいかけて、つかまえる | ナノ


  03


日に日に大きくなる気持ちはもう抑える事が出来なくて

バレても仕方ないと思いながら先輩に話しかけるけど、バレていない…と思う

部活中の先輩と、そうじゃない時の先輩は何だか全然違うから二度美味しい的な気分で毎日キュンキュンしっぱなしだ

「泉田先輩っ!」

朝練終わりの先輩は珍しく1人で歩いているから私は声を掛けずにはいられなかった
だってせっかく話せるチャンスだもん

練習前後はいつもあのデカイ先輩と顔のいい先輩が一緒にいるから中々話かけれないし

後ろから声を掛けて、腕まで掴んじゃったから先輩は驚いた顔でこちらを見た

「びっくりした。山田さん、おはよう」

それでも優しい先輩
立ち止まって挨拶してくれた

「おはようございます、先輩と話したかったから」

「ボクと?」

「はい!なかなか話す機会がなくて…迷惑だったらごめんなさい」

「迷惑じゃないから大丈夫だよ。山田さんは心配症だなぁ」

やっぱり優しい先輩に心がギューってしっぱなしだ

私は先輩の練習中のかっこよかった所なんかを沢山話したんだけど、顔色一つ変えずにニコニコ話を聞いてくれる先輩に脈なしか…と少し悲しい気持ちになった

それでも

「ありがとう、そう言ってもらえると励みになるよ」

なんて優しい声で言われたら、私の心は単純だからそれだけでふわふわと温かい気持ちになるんだ



「あ、お前…」

昼休みに飲み物が足りないから自販機に行ったら後ろに並んでいた先輩に声をかけられた

あ、この人はあれだ

「顔のいい先輩!」

「それはどうも」

思わず口に出してしまった!失礼だったよね…

なんか呆れられてる?怒ってる?
ちょっと怖いなこの先輩

「黒田な、黒田雪成」

「へ?」

「オレの名前だよ」

「はい!えっと黒田先輩?」

「お前は山田だったか」

「え、何で知ってるんですか?」

「あ?あー、塔一郎から何度か聞いてるからな」

塔一郎って泉田先輩…
泉田先輩が私の事を何か話してくれてるの

そう思ったら頬が熱くなる

どうしよう嬉しい

「やっぱりそういう事か」

「へ?何がですか!?」

「いや」

黒田先輩が何かを言いかけた時に「ユキ」って声がして振り向いたら泉田先輩が向かってきた

「2人はいつの間に知り合いに?」

私と黒田先輩が話しているのを見て泉田先輩が目を丸くした

「今たまたま会ったんだよ」

「初めて話しました」

私たちがそう言えば「何の話をしていたんだい?」なんて聞いてくる

「お前の話だよ」「泉田先輩の話です」

と声を揃えて言ったからか、泉田先輩はキョトンとした顔をした後に「悪口はよしてくれよ」なんて冗談めかして言うもんだから私は全力で否定した

それを見て黒田先輩は微妙に呆れながら「必死かよ」って鼻で笑う

それを泉田先輩さんがやんわり咎めた後、私に「悪口じゃないのはわかっているよ、ありがとう」と凄く優しい顔で言うからやっぱり好きだなぁ…と改めて感じたのだった



prev / next

[ back ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -