おいかけて、つかまえる | ナノ


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毎日、幸せだけど辛い
矛盾してるってわかってるけど…

泉田先輩はかっこいい
かっこよくて優しくて努力家で…本当にすごい人
そんな素敵な人の事、好きになる人なんて沢山いてもおかしくないし

泉田先輩が私を大切にしてくれて好きでいてくれるのは凄くわかってる
もっと甘えてもいいかもしれないのに怖い
ただただあの人の存在が怖いし不安で仕方ない

櫻宮先輩は泉田先輩が好き
櫻宮先輩は凄く美人で余裕があって
私は普通だし余裕なんてなくて

櫻宮先輩の事を好きになったらどうしようって不安が付きまとう毎日で

2人で話してるところも何度も見た
クラスメイトと話すなんて普通なのに、違う…
でもそんな事言ったら私のただの嫉妬でわがまま
私だって黒田先輩や葦木場先輩と話すし同じだもん

ナーバスになっていたけれど、次の授業は体育で
その前は泉田先輩のクラスが体育だったからまた会えるかななんて思ったのに、やっぱり頭の中にチラつくのは櫻宮先輩だ

それでも私は彼女、彼女と暗示をかけたのに

「抱き合ってるー!!」ってクラスの子達が騒いだ先にいたのは紛れもなく泉田先輩と櫻宮先輩で

きっと転けたのを受け止めたに違いないって頭ではわかってたのに、心臓がドキドキして息が苦しくなって

息の仕方、一瞬忘れてしまった位に衝撃だったんだと思う

そしたら手が震えてきて視界がぼやけて

あ、無理だって思った時には体育館から逃げ出していた

サボりなんて初めてで
それでも結局サボり切れずに先生にお腹痛いからトイレ行きますなんて言った私はどうかしてる

トイレには行かず使われていない空き教室に入る

何となくスマホを取り出して黒田先輩にLINEした
すぐ人に頼る私の悪い癖
でも誰かに話さないと心が苦しくてたまらない

そしたらガラッとドアが開いて、そこに居たのは黒田先輩だった



「おい、大丈夫かよ」
「大丈夫じゃないですー」

黒田先輩を見たらホッとして涙腺が緩んだ
どっと溢れ出る涙は止まらなくて
言葉にならないけど、上手く言えないけど先輩は私の言いたいことはわかってるのか黙って待っていてくれた

「つか、そこまで溜め込む位ならちゃんと塔一郎に話せ 」
「そんな事出来ないです」
「はぁ?お前ら最近辛気臭い顔しやがって!塔一郎も塔一郎だけどお前もお前だ!見てるこっちの身にもなれよバァカ!!」
「ご、ごめんなさい」
「とにかくちゃんと話をしろ!いいな??今、3年は全クラス自習だ。だから塔一郎連れて来るから話し合え、いいな?」
「えー…」

私が渋ると先輩は何も言わずこっちを見る
圧力が凄い…
結局私は折れて頷けば、先輩も「ん」と頷いてそのままその場を後にした

泉田先輩を連れてくるつもりなのはわかってる
でも何を話せばいいんだろう…上手く話せるかな

不安になって落ち着かなくて何度も何度もため息をついた


余裕が欲しい
何も考えず笑っていた最初の頃に戻りたい
何も気づかないくらい鈍感だったら、自分に自信があったら…

先輩みたいな素敵な人、もう出会える気がしない
離れないでって素直に言えばいいの?
好きでいて欲しいって、他の人の事好きにならないでって
櫻宮先輩が怖いって

そんなの言ったら嫌われるよ…
八方塞がりだもう


そうこうしていたら、ドアが開いて

「アオちゃん…!」
「先輩」
「ユキがアオちゃんと話せって…ん?」

泣いたの?って先輩が私の頬に手を添えて目尻にそっと触れた

心配そうに覗き込む先輩の顔を見て、頬に触れる先輩の手の温かさが堪らなくて私はまた涙が溢れて止まらなかった

「何があったの?話して」

先輩の問いに言葉に詰まる
言いたいし言わなければきっと一生解決しないのに、上手く言葉が纏まらなくて、ただ泣くしかできなくて

「ユキには話すのにボクには話せない?」

先輩の少し冷たい声に思わず顔を上げれば苦しそうなのか怒ってるのか呆れてるのか…よくわかんないけど、優しい顔ではなくて嫌われたかもって頭を過ぎったら余計に泣けてきて

「泣いてたらわからないよ。ちゃんと言ってくれなきゃ。アオちゃんは…いつもユキには話すのに…なんで」

そう言いかけた時に先輩のスマホが震えた
電話だったようで「ちょっと待ってね」と言われたけれど、電話の相手が

「ああ櫻宮さん」

櫻宮先輩だとわかった時にもう心臓が痛いくらい苦しくてもうどうしようもなくて、わたしはその場から逃げ出していた
先輩が何か言ったかもしれないけれど、そんな余裕なんてもうなくて

先生に言って早退して部屋に篭って泣いた

スマホが鳴ったけどもう今は誰とも話す余裕なんてなくてそのまま電源を切って放ったらかしにして

こんなに自分がネガティブだとは思わなかった
恋ってこんなにも難しいんだと打ちのめされた

もう頭の中を空っぽにしたい

目を瞑って深呼吸をして…
そしたら寝不足なのも相まっていつの間にか眠っていた









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