おいかけて、つかまえる | ナノ


  21


ただ笑っていて欲しいのに
真っ直ぐボクだけを見ていて欲しいのに

ボクと話している時、最近時々不安げな表情を浮かべるし笑っていても何処か寂しそうで

好きだよと、伝えてるつもりなのに足りないのだろうか

人懐っこい彼女はユキや拓斗や他の奴らとも楽しそうに会話してる
最近まで嫉妬心も消えて平穏に過ごしていたのに最近のボクはまた…


何時でも目につくのはアオちゃんとユキがいる時
ユキとは何もないのはわかっているんだ
だけどどうしても2人で話している時のアオちゃんの表情はとても楽しそうに見えて仕方ない

拗ねたり、笑ったり

コロコロ変わる表情、最近ボクに向けてくれてない

クシャりとアオちゃんの頭を撫でたユキはとても様になっていた
驚いた表情をした後、俯いてしまったアオちゃんの表情が読めなくて不安になった

照れていたら…?嬉しそうだったら…?

情けない事にボクは恋愛事に関しては中々自信が持てないようで
そんな時、ユキには敵わないかも…なんてつい弱気になってしまったんだ


話していても気まずい雰囲気、不安げな表情
ボクに「私の事、好きでいてくれますか?」なんて聞くんだ

なんで

何で伝わらない?何が不安にさせてるの?
わからない
それよりもこんな感じでアオちゃんはボクの事、好きでいてくれるの??そう聞いたら、この世の終わりみたいな悲しそうな顔してさ
怒ってないか聞くし、そんな訳ないのに

こんな風に悩んで、苦しくて
いっその事2人だけの世界になればいいのになんてらしくない情けない事言って

それでもギュッと抱きついてくるアオちゃんはどうにもこうにも可愛くて大好きで堪らないんだ




ぼんやりとクラスメイトの話に相槌をうつ
そう言えば最近よく話すなと思いつつ
クラスの係が同じだから話す事が多いけど

「……で、泉田くんはどう思う?」
「えっ、ああごめん櫻宮さん。なんだった?」
「もう仕方ないなぁ」

クスクスと笑う櫻宮さんは綺麗に笑う
綺麗だと素直に思うけど、結局ボクは最近アオちゃんのこんな笑顔見てないなって頭の中はアオちゃんでいっぱいで

曲がり角を曲がればアオちゃんの姿が見えて、こちらに気づいたアオちゃんはパァっと笑ったと思ったらその逆の顔をして
その表情の変化がスローモーションに見えて
どうしてそんな顔をするの?そんな事聞けずに話しかければ、笑って話してくれるけど悲しそうな顔で笑うから本当に最近そんな顔をさせてばかりだな…と情けなくなった

「すみません、移動中に話しかけてしまって。体育館ですか?」
「そう。今日は体育館」
「泉田くん、そろそろ時間」
「櫻宮さんすまない。じゃあまたね、アオちゃん」
「はい、あ、櫻宮先輩も止めてしまってすみませんでした」

大丈夫よと櫻宮さんは笑う
一方でアオちゃんはやっぱり作り笑いをしている気がして仕方ない
行こうと肩を叩かれて慌てて歩き出す

アオちゃんとはゆっくり話さないとと心の中で思いつつ次の授業に向かった



今日は授業が押して片付けまで授業中に終わらなくて、体育の授業が終わってから櫻宮さんと片付けをしていて
その時に次の授業で体育館を使う生徒達がやってきて、急いで片付けていたんだ

そしたら櫻宮さんが躓いて倒れかけたのを咄嗟に受け止めた
ギュッとしがみつかれて驚いて心拍が上がるのを感じたけれど、匂いも、感触もやっぱりアオちゃんとは全然違うなと

何当たり前の事言ってるんだボクは
全く…

「大丈夫かい?櫻宮さん」
「うん、大丈夫。ごめんね躓いちゃった」
「怪我はない?」
「ないよ、ありがとう」
「そう、なら良かった」

ニッコリと笑う櫻宮さんを見て、またアオちゃんの顔が浮かんだ

会いたいなと無性に思ったけど、まさかこの場面を見られているなんて思ってもみなかった

次に体育館を使うのはアオちゃんのクラスだった事も知らず、見られたことも気付かず、ボクはアオちゃんの笑顔が見たいなんて考えていた




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