おいかけて、つかまえる | ナノ


  19


なんとなく嫌な予感がする時ってあるよね

この間の泉田先輩の朝練の時のゴールの瞬間をくしゃみしたせいで見逃したり
どうしても食べたかった学食が売り切れてたり
苦手な問題当てられたり、急に小テストがあったり…

そんな事が続いて、それ以上に何かありそうな気がして胸がザワつく

あんまり考えないようにしないと…
なんて思ってたのに、そういう予感は当たるもので



掃除のごみ捨てに行った時に、泉田先輩を見かけた
話しかけよう!って近寄りかけてやめた

先輩の隣にいるのは、あのいつか見た泉田先輩の体育の終わりの時に一緒にいた美人の先輩

微妙な距離感は保っているけど近い…気がする
何だか楽しそうだし美人の先輩はまた泉田先輩の肩を叩いたり腕を掴んだり…

ちょっと引き気味の泉田先輩だけど顔赤くしちゃってさ

なんとなくまた悲しい気持ちになった


「あれ?アオちゃん?」
「葦木場先輩!」
「ごみ捨て?オレもだよ〜そこまで一緒にってわー!」

葦木場先輩の声が思いの外大きいし、今あんまり泉田先輩に会いたくないから思わず葦木場先輩の手を引いて影に隠れた

けど葦木場先輩デカいから何となく隠れきれてない気がする…
頭隠して尻隠さずって言うけど、逆だ
尻隠して頭隠さず…になってる

「葦木場先輩、シー!」
「どうして?」

私が泉田先輩の方を指さすと葦木場先輩がそっちの方を覗く

「あーなるほど」
「今会いたくなくて」
「別に話しかければいいのに」
「だっていい雰囲気だし」
「そうかなぁ?」

隠れてる私達の横を2人が通り過ぎた

笑い声や話し声が聞こえて、隠れきれてない葦木場先輩にも泉田先輩は気づいてなかった

「塔ちゃん行っちゃったねぇ」

オレに気付かないとか珍しいと葦木場先輩が目を丸くしていた

「ね、前も気づいてもらえなかったんです。あの先輩といた時…」
「そっかー。でも塔ちゃんはアオちゃんが好きなんだから自信持ちなよ」

そう言ってくれた葦木場先輩のおかげで少し元気が出た


その後、いつものように泉田先輩の部活を見て
その時に声が聞こえてきて
いや、話し声なんて沢山入り交じってる中で泉田君っていうフレーズとあの美人の先輩の声だったから思わず拾ってしまった

「何で泉田なの?もっと他にさぁ」
「えー、泉田くんかっこいいでしょ。優しいし」
「でも彼女持ちなんでしょ?」
「らしいね。1年だっけ?」
「そうそう、1年らしいね。まぁでもあんたなら…」


待って待って待ってーーー!
これは聞いてはいけない話だったんじゃないの…?
それともわざと聞こえるように言ってるの!?

怖…恐ろしい…

あんな美人に言い寄られたら男の人って嬉しいもんじゃないのかな

一気に不安に駆られて泣きたくなった



「アオちゃんどうしたの?」
「えっ?」
「体調でも悪い?元気ないね」

練習終わりに先輩と二人きりで話してるのに、さっきの女の先輩の会話が頭をよぎって上の空になってしまっていた

「体調、悪くないです!元気です!」
「本当に?」

眉をひそめて先輩は言う
先輩はとても鋭くて、流石というか…
でもそんな事バレたくなくて、私は誤魔化すように泉田先輩に抱きついた

「本当に今日はどうしたんだい?珍しいね」
「何もないですよ。泉田先輩、大好きです」
「ふふ、ありがとう」

ボクも大好きだよ

と優しい声で言う先輩に何だかホッとした
ドクドクと聞こえる先輩の心音と、アンディさんとフランクさんに包まれているこの感じもより安心感が増して
大好きなこの場所を誰かに取られるなんて考えたら苦しくなって、どうしても嫌で

このまま先輩に好きでいて貰えますようにと強く願わずにはいられなくて、顔を上げてキスをせがめば、先輩は思わず「アブ!?!?」なんて言って顔を赤くして

「本当に…参ったな」

なんて言いながらもキスをしてくれる

先輩は早々に目を閉じるのを私は知っている
だから私は近づく先輩の顔を見るのが好きで
長い睫毛が羨ましいな…何て思いながらその睫毛が触れそうな距離になってようやく私も目を閉じた


prev / next

[ back ]


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -