おいかけて、つかまえる | ナノ


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アオちゃんがボクの恋人になって数日

自転車に筋トレに…
そして隣には可愛らしい恋人がいて、ボクはとても充実していると思う

それにしても…

「アオちゃん、オレには差し入れくれないの?」
「え、欲しいんですか?」
「うん!塔ちゃんが美味しそうに食べるから…ダメかなぁ?」
「ダメ、じゃないですよ!」
「やったー、ありがとうー!塔ちゃん、アオちゃん今度はオレにもくれるって!」
「良かったじゃないか…ハハハ」



トレーニングが終わり部屋を出たら、外にはユキとアオちゃんが座って話してて
それにしても相変わらず仲がいいな…
二人ともゲラゲラ笑ってて何を話しているんだろう?

「お、塔一郎終わったか?」
「泉田先輩!お疲れ様です!」

待ってました、と笑顔で言われたらボクは何も言えない

まぁ、ユキや拓斗のおかげでこうして恋人同士になれた所もあるんだから今更嫉妬なんてするのはよそう

そう思ってても独り占めしたくなるボクは心の狭い男だろうか

それにしても、それだけじゃないんだよ
アオちゃんは、親しみやすいのか気づけば他の奴らとも仲良くなっていたんだ!

知らない間に…


ボクが見てる所でも、見てない所でも誰かしら彼女を構うんだ
そしてニコニコ物怖じすること無く話すんだよ


流石にヤツとは仲良くなるなんて思わなかったんだ

ボクは初めて対面した時の事は見ていなくて、他のヤツらに聞いた話だけど


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「何だお前。最近よく見かけるヤツだな」
「あ、こんにちは」
「何の用だ!ウロウロ邪魔するんだったら帰れ!!」
「違うんです、あの泉田先輩と待ち合わせしてて」
「ア?泉田さん?」
「そうなんです。あ、名乗らずすみません。山田 アオと言います。泉田先輩とは仲良くさせて頂いてて」
「そうか、なら悪かったな。オレは」
「あ、知ってます!先輩達から聞いたことあります…銅橋先輩ですよね!えっと妖怪!銅橋正清…先輩ですよね?」
「違う!オレは妖怪じゃねぇ!!!」

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ってやり取りがあったそうで…
それがきっかけで、すっかり仲良くなったようだ

男でもヤツには怯えてると言うのに…
全く彼女と来たら…

ほら、また2人で何か話してる

ボクは今日まだゆっくり話せてないのに
いや、やる事が多いから仕方がないんだ
仕方ないんだけど…

2人はボクの事、気づいてないようで
話の内容が嫌でも耳に入る


「お前、良くわかってるじゃねぇか」
「そうですか!?」
「泉田さんは、努力家で懐の深い人って事をな」
「はい!本当にストイックですよね…そして凄く優しいし…本当に素敵です」
「それでこそ、泉田さんの女だ!」

豪快に笑う銅橋と一緒に笑うアオちゃん

平和な世界だな…

じゃなくて…!!
なんて言う会話をしているんだ2人は
恥ずかしいじゃないか

何故、銅橋にまで嫉妬してたんだボクは
愚かだな…

色んな人に嫉妬して…
それだけ彼女が好きだからなんだけど

本当はもっと話したいし、触れたいし

それが無理なのは承知だし仕方ない事なのはちゃんとわかっているんだ

恋心は恐ろしいな、と苦笑いする

声をかけようとしたら、2人が気づいて

「泉田さん!」「泉田先輩!」

本当に平和だなと改めて


その後、やっと2人の時間がもてたんだ
やっと…やっとゆっくり話せる

「アオちゃん」
「お疲れ様でした、泉田先輩」

ああ、その言葉だけでどれだけ癒されるか

でもそれだけじゃ、今のボクには足りたいようで
アオちゃんの手を引いてそのまま、ボクの腕に閉じ込めた

「好きだよ」

思わず漏れてしまった言葉
1度溢れ出した思いは本当にとどまることを知らなくて

あんなに言えなかった言葉は今となってはこんなにも簡単に出てくるから不思議だ

「私も好き、泉田先輩が好きです」

アンディさん達も好きですよ

なんて言う彼女がどれだけ可愛らしいか

そんな事、ボクだけが知っていればいい
そんな可愛い所はボク以外には見せないで

…こんな想いがバレたら引かれるだろうな
余裕のない男なんて情けないし

だからボクはそこは隠して

キミにとってはかっこよくありたい…なんて柄にもなく思ってしまうから


それにしても…
もっとボクしか知らないキミが見たい

今日こそは

「アオちゃん」
「はい?」
「キス、してもいい?」

今日こそは、キミとキスがしたいんだ

アオちゃんは頬を染めながら笑って頷いてくれて少しホッとした自分がいた

そっと頬に手を添えたらアオちゃんは目を閉じた

その顔を見たら、あの眠ってた時のことを思い出した

本当に可愛い

白くて柔らかい頬も、桜色の唇もボクはちゃんと目と手に焼きつけて

ゆっくり…唇を重ねた

想像以上に

柔らかくて、あたたかくて、クラクラする

「好き」

彼女の漏らした声に、潤んだその目に心臓が鷲掴みされた

もう一度口付けて、そして抱きしめて

「ボクも好きだよ、大切にするから」

だからずっとボクのそばにいて
…そう願いながら、また頬に手を添えて

そしたら「ずっと傍に居させて下さい」ってキミは言うんだ

想いが通じたのか同じなのか…素直に幸せだと思った

かっこつけようか、なんて思ったけど素直に言うよ

「ずっと傍にいて欲しい」

ボクがそう言えばアオちゃんが花開いた様な笑顔を向けてくれるから

堪らなくなってボクはまたアオちゃんをきつく抱きしめた



















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