おいかけて、つかまえる | ナノ


  16


泉田先輩の告白の言葉を思い出しては1人ベッドの上で赤面してのたうち回る


どうしてもキミが欲しくて仕方がないみたい
全部が可愛くてたまらない
アオちゃんが好き


こ、殺される…泉田先輩に殺される!!

あの時の表情、声全てが素敵だった…

あの目に吸い込まれそうになったし、あの声と言葉に心が震えっぱなしだった

抱きついた時、アンディさんとフランクさんに歓迎された…気がしたし
先輩の匂いが本当にダイレクトに伝わるし
体温も心音も全部感じて胸が熱くなった

どうしようもないくらい好き
早く会いたいしまた抱きしめて欲しい

明日はどんな顔して会おう
どうしよう、先輩の彼女…なんだよね
彼女…泉田先輩の彼女……響きがやばい



朝練を見に行って、いつもの場所に立つ

先輩の姿が見えた時にいつも以上にドキドキした

ふっとこっちを見た先輩が、さっきまでキリッとした顔をしていたのに
…私と目が合うと目を少し見開いて顔を赤くしながら微笑んでくれた

目眩がしそうになりながらも私も精一杯笑顔を返す

不格好な笑顔だったかもしれないけれど、本当に余裕がなくて



「お待たせ」
「全然待ってないです!」

朝練が終わったら一緒に校舎に行く約束をしてた私達

朝は10分程一緒に話せる時間があるから、私はその時間が楽しみで仕方なかったんだ

「あの」
「なんだい?」
「朝練、お疲れ様でした」
「ありがとう」
「その、あの…凄くかっこよかったです」

チラッと先輩の顔を見て言うと、先輩は固まってしまって

先輩?と声をかけたら

「いや…!アオちゃんがあまりにも可愛くて、ね」

今度は私が固まってしまったら、先輩は小さく笑って髪を撫でる

だからそういう所、本当にずるい

何となく、もう少し近づきたくなったからそっと腕に触れてみた

そしたら先輩は驚いたのか、1歩後ろに下がってしまった

そんな先輩を見て、早まったかも…って恥ずかしくなって下を向く

恋人になったとは言え距離感がわからなくて
間違ったのかなって苦しくなった

そしたらいきなりアンディさんとフランクさんが目の前にいて(制服越しだけど)
とりあえず、おはようございますと心の中で挨拶をする

…じゃなくて!!

抱きしめられてるって気づいたのはほんの少したってからで、よっぽど頭が処理しきれなかったらしい

「ごめん」

なんのごめん≠ネのかはわからなくて
でも何も謝られる事はされていないから、私は首を横に振った

「ごめんね。キミがボクの恋人なんだって思ったら…嬉しいのと照れくさのとで頭がついて行かなくて…そしたらこうやって、抱きしめたくなって…」
「私も!私も、抱きしめて欲しかったから…嬉しいです」
「ダメだよ、きちんと嫌なことは言わないと」

嫌われたくないから我慢はしないで、と
眉を下げて言う先輩が堪らなく愛おしくて

「嫌なことなんて何もありません。遠慮しないで…欲しいです」
「ハハ、アオちゃんには敵わないな」


どうしようもなく今日もキミが好き



先輩がまた私を抱きしめてくれて、私の耳元でそんな事を言うから…
私は今度こそ目眩でアタマがクラクラしたけど、私もちゃんと言わないと

「…私もどうしようもない位先輩が好きです」

私が先輩の目を見て言うと、先輩は額に手を当てて息を吐いた

また間違えたのかと不安になったけど

「参ったな…幸せ過ぎてどうにかなりそう」

その言葉が嬉しくて、たまらなくなって「私も幸せ過ぎて死にそうです」と先輩に抱きついた

10分間の間に何度、幸せ過ぎて苦しくなったでしょう

その後は手を繋いで歩く
…事はなく隣に並んで校舎まで歩いた

人が多いこの時間はなかなか手を繋ぐ勇気はないけれど
きっと先輩もそうなんだと思う

でも、それでいいんだ

前よりも隣を歩く時の距離がずっと近くなったから

二人きりになったら「好き」の気持ちを遠慮する事なく言えるから

それだけで今は充分すぎるほど幸せだよ

横を向けば先輩が優しく微笑んでくれて

擽ったいけど心があったかい、そんな朝を過ごせて本当に私は世界一の幸せ者だと思わずにはいられなかった




















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