おいかけて、つかまえる | ナノ


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おやすみなさい

山田さんのLINEを確認してから、目を閉じた

目を閉じて思い浮かぶのは山田さんの顔で

毎日、会えば笑顔で寄ってきてくれて
毎日、こうして何かしらLINEをして

いつでもボクをかっこいいと応援してくれて

筋肉の話や自転車の話も楽しそうに聞いてくれて、オマケに一緒に筋トレなんかもして

思い返せば…山田さんのお腹はボクと違って柔らかかったな

って!!何を考えてるんだボクは!
そもそも!あの時は必死で無意識だったからそんな感触覚えているはずがないだろう!

なのに、ちゃんと覚えていたなんてボクは本当に……

あ、柔らかいと言っても背中や腕なんかは華奢だったな
そもそも、柔らかい≒太っている訳じゃない
だって彼女は別に全然太ってなんかいないし

なんだろう、あれが女の子特有の身体なのだろうか

って!だから!
そんな事考えたらいけないだろ、しっかりしろ!泉田塔一郎!!


でも結局そんなことばかりアタマの中がぐるぐる回って

山田さんの柔らかくてサラサラな髪の毛も匂いも、結局全部覚えているんだ


あの花が開いたような笑顔、明日も見せてくれるだろうか

…あぁ好きだなぁ

好き、そうか…そうなんだ

ボクは山田さんが好き、なんだ

胸にすとんと降りてきて収まったこの感情は、山田さんに対して恋心を抱いているという事だと気付かされた


参ったな

恋をした事は全くない訳ではないけれど
こんな感情は久しぶり過ぎて
そもそもそういう恋愛沙汰に疎い方だというのに、どうしたものか

山田さんがボクの隣に居てくれたら、あの笑顔をボクにずっと向けてくれるのならボクは…

ああでもわからない
山田さんにとってボクは親切な先輩≠ネだけかもしれないし

彼女はユキの事を何も思っていないと言っているけど、そんなのどうだかわからない

ユキとの仲を取り持って欲しいのかもしれないし
そんな女の子、過去に何人も見てきたじゃないか

あの子はそんな狡くしたたかな子ではないと、頭ではわかっているのにネガティブな自分に苦笑いする



「泉田先輩!朝練お疲れ様でした」
「ああ、ありがとう」

見れた
朝から、向日葵のように明るい笑顔を

ボクはいつもキミに癒されているんだよ

今日も太陽の陽射しを浴びてキラキラ光る髪の毛が綺麗で、思わず手を伸ばしてしまった

髪をひと房掬ってそっと離せばサラサラと落ちて

フワッと香ってくる優しくて甘い匂いに頭がクラクラしそう

「い、泉田先輩!?」

その声に彼女の顔を見たら、いつか見たあの日と同じようにほんのり顔を赤くして

暑いから?それともボクが触れたから?

どっち?

そう聞きたいのをぐっと飲み込んで、ボクは何食わぬ顔をして「なんだい?」と返した

「なんでも、ないです…へへ」

そうはにかんで笑う山田さんが素直に可愛と思ったから

「可愛いね」

と、思わず口にしてボクは…慌てた
何を言ってるんだボクは!ダメだろ、そんな事をいきなり…
山田さんが戸惑ったり困ったりしたらいけないだろ

ハラハラしながら彼女の顔をそっと見れば、さっきよりも顔を赤くして目を見開いて固まっていて

うれしい、と小さく…小さく呟いたのをボクは聞き逃す訳もなく

「泉田先輩はいつもかっこいいですよ」

不意に言われた言葉に今度はボクが顔を赤くしたと思う

何度も言ってくれていたこの言葉も、気持ちを自覚したらより嬉しく感じるなんてボクはどれだけゲンキンなヤツなんだ


「ありがとう」

そう言って頭を撫でれば、嬉しそうにしか見えない顔で笑うから

少し位自惚れてもいいのかな

もうボクは目の前いるこの可愛い女の子をどうやって手に入れようか、考えてばかりいたのだった





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