05.誰もいない図書室
ひょんなことから、東堂くんと一緒に図書室で作業をしている
私たち以外誰もいない図書室はとても静かで
恋心を抱いている東堂くんと話すだけでも緊張するのにこの静かな空間で2人きりの今、私の心臓はどうにかなりそうだ
ただ新しい本を入れる単純作業なのに、東堂くんが近くにいると思うと手が震える
何か話した方がいいのだろうか
だけどこんな状態で何が話せるというの私…
呼吸音ですら聞かれたら恥ずかしい
だから息を止めたくなるから困ったものだ
小さく息を吐き出したら東堂くんに疲れたか?と心配されてしまって申し訳ない気持ちになる
「ううん!疲れてない、ただちょっと緊張しちゃって」
「緊張?何故だ」
「だって、男の子と2人きりなんて殆どなった事ないから緊張しちゃって…変だよね〜」
正解は『好きな』男の子とふたりきりなんて殆どなった事ないから緊張している…なんだけどそんな事間違っても口走ってしまったら私の人生はおしまいだろう、大袈裟じゃなく
それにしても返事が返って来ないから不安になる…
あれ?なんか間違えた事言ったかな?
心配になって東堂くんの顔を見たら何とも言えない顔で固まっていた
やっぱり変なとこ言ったかな
不安になって「ごめんね」って東堂くんの腕に触れたら東堂くんが大きくカラダをビクつかせて何だか凹みそう
急に触ったから引かれたのかも
なんて考えていたら急に腕を引かれた
…と思ったら目の前が東堂くんのシャツの色しか見えなくて
「いっった」
バサバサと何かが落ちてくる音がして東堂くんに当たったみたい
「え!?だ、大丈夫?」
「ああ、この棚にオレの腕が当たって上に無造作に置かれていた本が落ちて来たようだな。全く誰だこんな所に置いたやつは」
ブツブツ怒ってはいるけど怪我はなさそうで安心した、んだけど…えっと
息を吸えば私の匂いでも図書室の匂いとも違う匂いが鼻をくすぐった
それが東堂くんの匂いだと気づいた時に私の思考回路が停止して、回されているであろう東堂くんの腕と胸の感触に心が震えた
「山田さんは大丈夫…か……!!??」
東堂くんも今の状況に気づいたのか私の肩を思いきり掴んだまま、後ずさる
肩も離して…恥ずかしくて死にそうだよ
なんて言葉に出来ずに私は涙目だ
「悪い、その咄嗟とはいえこのような…」
「い、いいよ、いいよ!ごめんね、私如きを庇って痛い思いさせちゃって怪我なくて良かったぁ」
ハハハって誤魔化すように笑ったけど、東堂くんは黙ったままで
あれ?また何か間違えたかな
「…私如きなんて言うな。山田さんは女の子だからカラダに怪我なんてさせられんよ」
少し怒ってるような顔で言われて思わず謝った
そしたら今度は優しい顔で「謝らなくていい。ただ驚かせて悪かったな」と東堂くんが私の頭を軽く撫でて言うもんだから、少し落ち着いた心臓がまた暴れ出すように忙しく動き始めたのだった
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