06.鼓動が一つ高鳴って

山田さんと図書室で一緒に本の整理をしていた時に、ちょっとした事でオレは動揺でカラダが揺れてその時に思わず後ろの棚に肘が当たっていたみたいで

その棚は建付けの棚ではなく可動式の物だったので、当たった衝撃で上に無造作に積んであった本が落ちてくるのがわかり咄嗟に山田さんを庇った

本当に何の下心もなく

本が落ちてきて当たったのは痛かったが、山田さんが無事なら良しとしようではないか

そう思って我に返れば山田さんを抱きしめている事に気がついて思わず距離を取った

私如きを庇ってくれてありがとう

なんて彼女は言う

そんな、自分を卑下しないで欲しい
庇うに決まっているだろう、オレが傍にいて女の子が怪我をするなんてありえんからな

その後若干照れが生じてかお互い黙々と無言で作業して
そしたら思ったよりも早く終わったのでその後少し話をした

その後図書室の鍵を返しに行くと山田さんが言うのでオレもと言ったが悪いし先に教室に行ってて、と言われてしまったので素直に頷いた

教室に戻るともう殆どのクラスメイトが揃っててとても騒がしい
先程の図書室が静かだったから不思議な感じだ

ふと図書室での出来事を思い出す

山田さんは男子と2人きりにあまりなった事がないと言っていたな
それで緊張すると言った時の顔が何とも言えない気持ちにさせられて

思わず反応出来ないでいたら、山田さんは不安気な顔でオレの腕に触れたから…
正直あの時は情けない事に驚いてしまった

それでヒジが当たって、本が降ってきて

結果的に山田さんを抱きしめる形になっていた

あの時は本当に守らなければの一心だったのに今はどうだ

山田さんの小さなカラダの感触とか、甘い匂いとか…
そういう事はきちんと自分の頭の中にインプットされていた様で、自分に酷く呆れた

少し早まる鼓動を抑えようと小さく深呼吸するのに軽く目を瞑る

それでも結局思い浮かぶのは山田さん顔だった

オレが何か言った時にふと染まる頬や泳ぐ目を思い出すと擽ったい気持ちになる

そういう女子の顔なんて沢山見てきた筈なのに何が違うのか

わからないけど、今はこの気持ちが心地いいから深く考えないようにもう1度深呼吸した


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