16.色んな顔を見せて


尽八くんと初めてキスしたあの日、誰かに見られていたらどうしようって思っていたんだけど幸いキスしたのは見られてなかった

けど

あの後ハグされたのは誰かに見られていたらしく、尽八くんと私が抱き合っていたと速攻で噂になってしまった

尽八くんが質問攻めにあってたけれどハッキリと「付き合ってる」って言ったから阿鼻叫喚、まさに地獄絵図…そんな感じだった

もちろん私も質問攻めにあったし、ヒソヒソされてる感はあったけど尽八くんが「何かあったらすぐに言ってくれ」って言ってくれてたし心強かった

正直何を言われても構わないんだ
だって尽八くんと付き合った時からそれなりの覚悟はしていたし、私に何か言いたくなる気持ちもわかるから
普通に納得は出来ないだろうし

そうやって思いながらハラハラしていたけど特に何か言われる訳でもなく割と平和に過ごせている

でも何となくお昼の時は未だに別々に空き教室に向かう私達

特に意味は無いんだけどなんとなく、ここは秘密の場所にしておきたい気持ちがあったからかもしれない

2人で行けばやたら目立つし

だから私達はそこは何も言わずにいるんだろうね

「尽八くん!お待たせしました」
「待ってないよ。アオ…!」

私は手を広げる尽八くんの胸に飛び込んだ
尽八くんの匂いでいっぱいになるこの瞬間が好きで仕方ない

「今日も大丈夫か?」
「大丈夫だよ、尽八くんは心配症だね」
「当然だ」
「ふふ、ありがとう。でも大丈夫だから心配しないで」
「ならいいんだが」

いつも気遣ってくれる尽八くんはやっぱり優しい

「大丈夫だよ。何だかんだみんな優しいなぁって」
「ああ、ファンの子達にはちゃんと言って聞かせたし悪い子はいないよ。でも何かあったら隠さずに言って欲しい」
「うん、ありがとう。でも何かこんな事言うのもあれかもしれないんだけど…」
「ん?」

「なんか悪いなぁって言うと違うな…いいのかなって思ってしまう事はあるんだぁ」

顔を上げれば、尽八くんは解せないって顔をしてそんな顔が珍しくて可愛いなって思う

「どういう意味なんだ?」
「うん…尽八くんはやっぱりかっこいいし人気者だし優しいし、自分なんかでいいのかなって」

私がそう言うと尽八くんは何かちょっと怒ったような、悲しそうな…そんな顔を浮かべて「バカだな」って呟く

そして私の後頭部を撫でてそのまま尽八くんの胸に押し当てられて、そのまままたギュッと抱きしめられる

「アオ」
「はい」

耳元で尽八くんが私の名前を呼ぶ
声が近すぎてドキドキする
尽八くんの心臓の音とカラダの熱と相まって余計に

「前から時々思っていたのだが、アオは自分を卑下する事があるがそんな事は言わないでくれ。オレはアオが好きで、これ程までに女子に恋心を抱いた事なんてなくて…自分でも戸惑う位にな。アオはオレにとって可愛い自慢の彼女だから自信を持て」

そう言って貰えて嬉しくて、尽八くんの声が優しくて心が揺さぶれる

どうしても顔が見たくなって顔を上げれば


このオレが好いた女子なんだからな!

ってニッと笑う尽八くんがかっこよくて、私も思わず笑みがこぼれる

そしたらまた髪を撫でられて横髪を耳にかけられて
その一連の仕草も綺麗で絵になって思わず見惚れてしまう

そしてそのまま頬に手を添えられたから、私はそっと目を閉じた

「好きだよ」

の言葉の後に降ってきたキスに私は今日何度心を揺さぶられたでしょうか

「私も大好き」

私がそう言うと尽八くんが凄く嬉しそうな顔をしてくれるからキュンとして堪らなくなって、そのまま背伸びして尽八くんにキスをした

そしたら赤面しながら「ならん、ならんよ!女子からそんな!」なんて慌ててて、私は笑う

今日は色んな尽八くんが見れて幸せだな

「でも好きだから私からキスもしたくなるよ」
「アオは時々とんでもない事を言うな」
「そうかな!?」
「本当に…可愛いな」

そう言う尽八くんの顔は本当にかっこよくて王子様みたいで「ずるい」って言ったら、尽八くんは機嫌良く笑って「ずるくはないな」と意地悪な笑みを浮かべてキスをするから、やっぱりこの人には敵いそうにないし私はきっと何度も何度もこの人に恋をするんだろうなと思った




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