15.ロマンチックには程遠いけど

アオに会うと癒される
髪を撫でると嬉しそうな顔をするアオが可愛い
抱きしめた時にこみ上げてくる愛しさは言葉にならないもので

例えば休日などで会えなくても電話で声は毎日聞くし、それだけで心が満たされていたのに最近はアオともっと触れ合いたいと思ってしまう

手を繋ぐだけではなく抱き合うことだけではなくて、正直に言うとキスがしたい

しかし告白があんな形になってしまったから、キスする時は最高のシチュエーションにしたいのだ!わかるだろうか、この気持ち

しかし、最高のシチュエーションとは何だろうと最近はずっと考えている
よく考えたら2人で会う時間なんて限られてるし今は休みも殆どないのでデートも出来ない

そんなロマンチックなシチュエーションなんて出来ないではないか!

どうしたものか…

「尽八くん?」
「あ、あぁ!すまない」
「疲れてる?大丈夫?」
「疲れてないよ。少し考え事をしててな」
「そうなんだ。悩み事?私で良かったら聞くよ?」

まぁ悩み事と言えばそうだけど、そんなの言えるわけもなく
何となく歩いていた足を止めて、オレは悩み事でないよ。ありがとう、とアオの頭を撫でる

そしたらやっぱり幸せそうな顔で笑ってくれるから、可愛いなと素直に思う

そのまま頬まで手を滑らせればアオは驚いたような表情をして、そして頬を赤らめる

その顔もいいな

もっともっとそういう顔を見たいと思うオレはどうかしている

そしてそのまま顔を近付けて…
って!ならんよ!

バッと距離を取ればまたアオは驚いた顔をした
今日は驚かせてばかりだな

「びっくりしたぁ、キスするのかと思った」
「いや、違………わないな。キスしそうになった。すまない」
「何で謝るの!?私は嬉しかったのにな」
「嬉しい…?」
「好きな人とキスしたいと思うもん。だから尽八くんがキスしてくれたら嬉しい」

アオはこんな衝動的にしそうになったキスでも嬉しいと言うのか…?

オレ達の初めて≠フキスなのに

とそれとなく聞けば「尽八くんが私とキスしたいと思ってくれた事でしょ?それが凄く嬉しいんだよ」って笑う

可愛すぎないか

言動も表情も全部、全部がオレの心を揺さぶる

たまらなくなって彼女の腕を引いて抱きしめた

顔を見れば頬を染めてこっちを見てるアオが堪らなく可愛くて思わず笑みが零れる

また髪を撫でて頬に手をやれば、アオの瞳が揺れる
その感じ、久々だな。緊張してる時の目だ

「アオ、好きだよ」

そう言ってもう一度顔を近付ければアオが驚いたのか目を見開いたが、オレはもう今度はそのままアオに口付けた

ああ幸せだ


オレは普段色々と気をつかっていたはずなのに、愛おしさが溢れて抑制が利かなくて此処がどこだとか考えずにアオにキスをした

彼女の前ではもっとかっこよくいたいと思うのに、女子が喜びそうなシチュエーションで最高の思い出に残るキスをするつもりだったのに

結局オレ達の初めてのキスは
『デート中』でなく、オレの朝練後教室に向かっている時で
『綺麗な夜景スポット』とか『夕陽の見える海辺』とかそんな場所でない、下駄箱前と理想とは程遠いモノだった

誰かに見られてるかもなんて考えてもいなかった

正直そんなのは半分どうでもよくなっていて
ずっと隠してきた反動か少しスッキリした気持ちになっている自分になんて自己中な男なんだと呆れつつ

もうこれで良いのかもしれないと
悪い事をしている訳ではないのだし、オレは何を言われても構わないし万が一アオが何か言われた時の守る覚悟なんて…
そんなものとっくに出来ているのだからな


唇が離れてアオを見ると顔を赤くして目を潤ませていて、本当に可愛い

「良かったの?こんな所で」
「急に驚かせてすまない。嫌だったら謝るよ」
「そうじゃなくて!もしかしたら誰かに見られたかもしれないよ、いいの?朝早いから殆ど人がいないと言えど…私は全然いいけどさ」
「そんなのもう…いいんだ。今まで沢山我慢させてすまなかったな」

オレがそう言えばアオは眉を下げて「そんな我慢なんて…でも正直嬉しかった」と言うからこれで良かったのかもしれないと自分を納得させた




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