12 恋人という距離の取り方

アオちゃんと付き合い始めてからというものの、幸せな日々が続いている

別に付き合いを隠している訳ではないが、誰かに言う訳でもなく(部活の仲間は除く)

本当は見せびらかしながら歩きたい所ではあるが、色々と考えたらそうしない方が賢明だろうという結論に至った
アオちゃんの事だから、何となくその辺りを感じ取っているのか何も言われないから有難い

2人で確実にゆっくり話せる時間は週に2日程の昼休みというのが少し不満ではあるが仕方ない

時々アオちゃんを家まで送る時、あの時間もオレにとっては貴重で大切な時間だ

もっと色々デートだってしたいと思うけどそんな時間はなかなかないからな…

それにしても教室にいてもついアオちゃんを目で追ってしまうもので

可愛いな…と思う

そして笑顔で話している姿を見ればその笑顔はオレに向けてほしいと思うし、男と話している姿を見ればすぐにでも割って入りたくなるんだ

何故オレは我慢しているのだろう
…と頭を過ぎる時もあるが仕方ないと言い聞かせる

荒北にボヤいたら「ダッセ」の一言で片付けられてしまったが、ださくはないな!と自信を持って言えないのが痛い所である


久々に2人で過ごせる昼休み

いつもの空き教室に入ると、先に待っていてくれたアオちゃんが駆け寄って来たから、堪らなくなって手を引いてそのまま腕に閉じ込める

フワッとアオちゃんの髪の匂いが漂ってきて思わず心臓が跳ねる

「癒される」

本当に癒されるもので
オレとは違う小さなカラダに柔らかい髪
驚いてか彼女の肩が跳ねるがそういう初々しい所もまた可愛いんだ

「私も癒される…尽八くん好き」

か、可愛い!とてつもない破壊力だ
ああ、本当に幸せだとその感情しか今はない

「オレも好きだよ」

目を見て言うと、耳まで真っ赤にして固まるから本当に本当に可愛くて堪らない
もう何度も好きだと言っているのに、まだこんなにも可愛い反応をするんだよ彼女は


アオちゃんは恥ずかしいからかオレの胸に顔を埋めて頬をすり寄せる
こんなにも甘えて来るのは珍しい

「寂しい思いはさせてないだろうか」

ずっと気になっていた事で
きちんと話した方がいいのかもしれないと思ってはいたんだ、今後の為にも

「寂しくないって言ったらウソになるかな。けどね、この学校での尽八くんの存在って凄いから…だから今のままでいた方がいいとは思ってるんだ。でも……」

口篭る彼女の髪を撫でて「言いたい事はきちんと言ってほしい」とオレなりに優しい口調で言えば

「うん…でもね、こうやって2人の時は沢山甘えさせて欲しいなって。沢山ギューってして欲しいし、好きって言ってほしいな」

なんてワガママだよね

彼女はそう言うが、ワガママなものか!
ささやかな願い事ではないか!

「ああ。いくらでも甘えてくれ。ワガママだってもっと言ってもいい位なんだ。色々と気を使わせてすまない」

「全然!幸せなんだよ?今こう出来てるだけで幸せだもん…」

「本当に…アオちゃん…アオは可愛いな」

「え…」

初めて女子の名を呼び捨てで呼んでみた
少々慣れないが、特別なこの感じがいいと思うけど

「アオ、好きだ」

「私も尽八くんの事大好き」


これが今のオレ達の精一杯

だけどいずれ周りにも隠さず堂は々として行くつもりだ
それまで少し待たせてしまうけど

それでもなるべく寂しい思いをさせないように

夜には電話で話そう

2人の時は抱きしめながら
髪を撫でながら
目を見ながら

安心させる言葉を
好きだと言う気持ちを惜しみなく言おう

今度休みが出来たらデートだってしよう

そしてアオが幸せそうに笑ってくれたら、それだけでオレは幸せなのだから











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