10.突然こぼれた涙

女子からの呼び出しの後、ゴミ袋を持って歩いている山田さんを見かけた

考える間もなく体が先に動いていて彼女から一つゴミ袋を取り上げた

何となく会話が続かない
先程の見られていたのだろうか

そんな事を考えながら歩いていると山田さんが後ろで歩いている事に気づく

「すまない、歩くの速かったか?」

「ううん!そんな事ないよ!私が遅いだけ」

少し歪んだ笑顔に違和感を感じる
何かしてしまっただろうか

ごみを捨てて、来た道を戻る

歩くスピードを落としても、山田さんは更に歩くペースを落とすから隣に並ばない

「山田さん、少し話さないか」

少々強引ではあったが、戸惑う山田さんを無視して腕を引いて中庭のベンチに腰を下ろした

「何かしただろうか、そうだったら謝らせてくれないか」

オレの言葉が唐突過ぎたのか、山田さんは驚いてた顔でオレを見上げた

「そんな、何もないよ、東堂くん何もしてない!」

何だかごめんねと謝る彼女の瞳に涙の膜が張ったかと思えば一気にこぼれ落ちた

「あれ、おかしいなぁ…ごめん」

懸命に笑顔を作ろうとしているのだろう
だけど涙はとめどなく溢れていて

オレはポケットからハンカチを取り出して彼女の目元を拭った

「何かあるんだったら話してくれないか」

「何もないよ、本当に。ごめんね急に泣いちゃって…えと、ほら昨日のドラマのラストが悲しくて、その…その」

山田さんは嘘が下手くそだなと心の中で苦笑いをする

そんなに知られたくない事ならば無理やり聞き出すのは辞めておいた方がいいかもしれない

しかしだな

「悲しそうな顔は見たくないんだ」

「えっ」

心の中で留めているハズの言葉なのに思わず口にして驚いた、自分自身に

ああ、もう無理かもしれない


山田さんが気になる存在だった
初めて会った時からずっと

だけどどういう意味の気になる≠ネのかはあまり考えないようにしていた

このままでいい、このままで

そうやって見ぬ振り知らぬ振りを続けてきたがもう無理だろう

オレは

オレは



「山田さんが好きだ」

そう、好きだ

「え?」

急に山田さんが驚いた声を出すから、ハッとする
山田さんの顔がとてつもなく赤い

「ん?」

あれ?

まさかさっきの…声にだしていたか?

待ってくれ、きちんと自覚したばかりなんだ(いや元々好きではあったのだろうが)

だから!そうではない!

「あの、す、す、すきって…私の聞き間違いかな」

やっぱり言ってしまっていたーー!

今ではないだろう、想いを告げるのは
オレ自身の心の準備もないのに

自覚した今、もっと距離を詰めて段階を踏んで、最高のシチュエーションで想いを告げるものではないのか!?

なのに、最大級のミスをおかしてしまった

山田さんがオレをどう思っているのかわからないのに、一瞬で失恋コースだったら笑えないではないか!

誤魔化すか、先程の言葉の意味を

色々と考えつつも山田さんの顔を見たらどうにもこうにも誤魔化しきれる自信がなくなった

オレの言葉を待っているのがわかって観念した

かっこ悪いのは好かん
だから、今からはきちんと伝えよう

「聞き間違いではないよ」

「えっ、ウソ…」

そう言って口もとに手をやる山田さん
その手が震えてるのがわかり、思わず手をとった

震える両手を優しく包み込むように握る

「嘘じゃない。山田さんが好きだ」

そう言ったらせっかく引いていた涙が山田さんの頬を伝う

「私も好き…」

ポロポロと溢れる涙を今度はそっと指でぬぐった

そしたら先程の沈んでいた表情とは嘘みたいに幸せそうに微笑むから、どうしようもない感情に見舞われた

可愛い…

いやずっと可愛かった
赤くなる頬も泳ぐ視線も、笑顔も声も

自分の感情をハッキリさせた途端に溢れる想いになんて現金なヤツなんだと呆れ返る

気持ちを認めて、思わずまだ言うつもりのなかった気持ちを口にして

一瞬頭を抱えたが、山田さんもオレと同じ気持ちでいてくれたから結果オーライだろう

さすがオレとしか言えんな

そう、だからきちんと言わねばな

「同じ気持ちでいてくれたんだな」

「うん、好き」

「嬉しいよ。本当に。もう1度言うが山田さん、オレはキミが好きだ。オレと付き合ってくれないだろうか」

「はい、私でよければ喜んで〜」

止まったり溢れたり忙しい山田さんの涙を拭いながらオレは幸せな気分に浸ったのだった







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