09.想えば想うほど切ない

東堂くんとは仲は良いと思う
話しかけて貰えるし連絡もくれる

だからその度に好きの気持ちが大きくなって

隠れている自信は元々ないけれど、辛うじて出さないようにしている部分ももうそろそろキャパオーバーしてしまいそうだ

東堂くんは誰にでも優しくて親切でかっこよくて
運動神経も抜群で勉強も出来る
欠点なんて何も無いじゃない

あんなのみんな好きになっちゃうよ…

そんなの私が痛い程感じてる

これ以上好きになっちゃダメだ
毎日頭の中で警鐘を鳴らしているのにココロは全くもって反抗的で

少し仲良いからって自惚れてはいけない
だってもしかしたらそんな仲良い女の子、私の他にもいるかもしれないじゃん

そう考えたら切なくて苦しくて

話せた時は嬉しくて微笑まれた時はあんなに幸せな気持ちになるのに、私はどれだけワガママなんだろう

仲良い女友達ポジションになってしまうのも色んな意味で絶望的だから……
だってあわよくば同じ気持ちになって貰えたらって心の底から願ってる私が、ただの女友達でずっと過ごすのは辛いんだもん

気持ちを伝えてすっきりしてしまおうか
時々そんな事を考えるけど、それも出来ない私はただの臆病者でしかない



今日は掃除当番の私はジャンケンに負けてごみ捨てを任されてしまった

ついてないな…
と思いつつも負けたものは仕方が無い

二つあるゴミ袋をもって私はごみ捨て場に向かった


「あの、東堂くんが好きです」

そんな声が聞こえて思わず立ち止まってしまう
東堂くん、って言葉に反応してしまったから

ごみ捨て場に行くまでに告白スポットがあると聞いていた
恐らくそれがここなんだろうな
静かで花壇に咲いた花がとても綺麗で…

少し回り道をしたらごみ捨て場まで行けるのに
東堂くんがなんて返事をするのか不安で動けないでいた

盗み聞きなんて本当にイヤな奴…

わかっているけどでも

オレも好き、なんて言ったらどうしよう
付き合おう、って言ったらどうしよう

友達からで、それですら嫌だと思ってしまう私は救いようがない

「すまない」

そんな声が聞こえる

優しくてそして真剣な声で
付き合えないと、でも気持ちは嬉しかったと

ホッとしている自分がいるけれど

でも私もきっとこうやって振られちゃうんだろうななんて悪い風に考えちゃって

別に自分が振られた訳じゃないのに心臓がギューって苦しくなった

女の子が去って行ってハッとする

そうだ、ごみ捨て行かなきゃ
おぼつかない足取りで歩き出す

もう終わったのに、何食わぬ顔で通ればいいのに、私はそれが出来なくて回り道をしようと歩く方向を変えた

そしたらいきなり誰かに腕を掴まれて
驚いて振り向けば東堂くんだった

「山田さん、ゴミ捨てか?」

「そ、そうなのジャンケンに負けちゃって」

変な顔になっていないか不安になりながらもアハハと笑顔を作る

「一つ持つよ」

そう言って東堂くんは私が持っていたゴミ袋を一つ持つとそのまま歩き出した

「え、悪いよ」

「いや、手伝わせてくれ」

「…ありがとう」

優しいね、だから苦しいんだよ
だって何か一つ優しくされる度に好きが募るから

何となくさっきの事もあって話せなくて、東堂くんも何も言わないから無言で歩く

少し前を歩く東堂くんを見ていたら

やっぱり好きすぎる…
って想いで溢れかえって切なさで心が痛くて

でもさっきの子みたいに「ごめん」なんて言われたら耐えられる自信が無い

あれも嫌これもイヤそれは無理

こんな事ばかり考えてる自分自身が情けなくて嫌で仕方なくて

色んな気持ちが入り混じってぐちゃぐちゃになる

あ、泣きそう

泣いちゃダメだと耐えるけど
気を緩めたら一瞬で涙腺崩壊してしまう

東堂くんにバレませんようにと願いながら

少し歩くペースを落として東堂くんの後ろを歩いたのだった






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