アオちゃんとこれといった進展がないまま1年が過ぎた

良くも悪くも付かず離れずで

待つと言ったから仕方ないと思いつつも時々強引にでも手に入れたい衝動に駆られるから困りものだ

そんな事、出来るわけがないのに


2年に上がりオレのファンも増えた
夏になり暑い練習の中、沿道沿いの女子の声援は励みになるし気分がいい

そんないつも応援してくれている女子達の会話が、この間たまたま聞こえたんだ

「東堂さまは皆のもの!」
「東堂くんは女の子皆に平等だもんね」
「そうそう、皆平等で優しいよね」
「アイドルだもん!」

女の子皆に平等…か

そうだな。ファンの女の子達は皆平等に可愛い
有難いと思っている


だけど…皆、ではない
アオちゃんは別
アオちゃんだけは特別

だから、ほかの子皆には“平等”なんだ

「尽八くん…?」
「ん?どうしたアオちゃん」
「どうしたのは尽八くんだよー!」
「少し考え事をしていたんだ」
「悩み事でもあるの??」
「悩み事と言われればそうかもしれないな」

心配そうにこちらを見るアオちゃんは可愛い
しかし悩んでいるのはアオちゃんの事だ
そう素直に言えばアオちゃんは申し訳なさそうな顔をした


「まだ決心がつかないか?」
「ん…ねぇ、私はもうすぐ成人しちゃうでしょ」
「そうだな。だからどうしたんだ」
「未成年と成人だよ、尽八くんと私」
「何が言いたいんだ??アオちゃん」
「何か犯罪だよねって」
「違うだろう!!そんな風に誰も思わない」
「私の気持ちがついて行かないもん」


そんなモノなのだろうか
手に入りそうで入らないもどかしさ
いっその事もう解放してあげた方がいいのだろうか

アオちゃんの大学生らしい@愛や生活をなんのしがらみもなく過ごさせてあげた方がいいのか

オレの恋心がこんなにもしつこくてアオちゃんの邪魔をするならばもう諦める事を考えた方がいいのかもしれない

好きで好きで仕方ないけれど、ここまで毎回悩ませてそれでいいのだろうか

大人になれ、東堂尽八


「アオちゃんが、辛いならもう…諦めるよ」

ごめん、と謝ればアオちゃんは驚いたのか目を見開いて固まった

「オレの執拗い恋心が、アオちゃんを縛り付けて苦しめてるのならオレは諦めるよ。今まで本当に」
「…いや」
「え??」
「自信がないの、でも尽八くんが離れるのは嫌…ごめん、わがまま言って。何で三つも私が年上なんだろう、なんで同じ学年じゃないんだろう、高校生の尽八くんは眩しすぎる。かっこいいしモテるし優しくて。私に拘らなくても他に沢山素敵な子もいるのに…」

寧ろ私が縛り付けてごめん…

そう言って涙を零したアオちゃんを見て胸が苦しくなって思わず腕に閉じ込めた

「尽八くんの青春を私が縛り付けてる事が苦しい」

「オレがアオちゃんの事が変わらず好き、それだけの事だよ。縛られてなんかいない、オレ自身の気持ちだ。寧ろオレがアオちゃんを離したくなくて必死で…ごめん」

「自信を持って隣に並べないのに、離れたくない。ごめん、どうしたらいいのかわからない」

どうしたらいいのか、本当にここまで来て恋人になってくれそうもない彼女に業を煮やしそうになる
だけど、何となく終わりが見えた気がした

「アオちゃん」

オレがそう呼べばしっかりこちらを見てくれて
安心させるようにやんわりと手を握りる

「歳がそんなに気になるのなら、まだ待つよ。来年になればオレは18歳になる。18なら結婚もできる年だよ。なぁアオちゃん、今は大きく感じる3つの年の差なんてこれからどんどんちっぽけに感じるようになる。来年もう1度想いを告げるから…その時はきちんと返事が欲しい」

「ごめんね、ありがとう…」

ポロポロと零れる涙すら、綺麗で
どこまでもアオちゃんが愛おしくて仕方ない

ちゃんと返事するから
自信つけてくるからとその言葉を聞けただけでそれでいい

じれったいけど、色々と複雑な想いをかかえるのは仕方ない事で
きっと、オレにはわからない何かがあるのだろう

「これからオレも更に忙しくなるしな。もっと大人になって迎えに行くから」

小さく笑って頷く彼女をオレは我慢が出来ずまた抱きしめた

だけどこうするのも取り敢えず今日まで

来年、ちゃんと自信を持って受け入れて貰える位の男になってから

今だけ、あと少しだけだから
そんな風に心の中で言い訳しつつオレは暫くアオちゃんを離さず抱きしめていた



prev next
back


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -