考えて欲しい、ゆっくりでいいから

尽八くんに言われたこの類いの言葉に初めて頷いてしまった

あんな真っ直ぐな目で見て言われたら…
もう私は目を逸らすことが出来なかった

もうずっと想い続けてくれている
かっこいいし優しいしモテるのに、彼女は作らなくて
私がいいから作らないと、そう言われた

それが嫌じゃなくて寧ろ嬉しく思ったのに臆病な私は、やっぱり尽八くんが高校1年生だと言うことに引け目を感じて1歩その先に進めない

尽八くんと一緒にいるのは楽しくて落ち着くし、隣に居れたらと思う
多分近所の弟みたいな可愛い男の子、ではもうないのもわかってる

それを言い訳に見て見ぬふりを続けるのが辛くなってきたんだ


尽八くんは部活がハードなのに、結構な頻度で会いに来てくれる
でも時々疲れてるんだろうな…そんな顔をしてる
それは多分ほかの人にはわからない
ほかの人はきっといつもの尽八くんにしか見えないと思う
それ位そういう部分≠彼は見せない

だけど私はわかるから、週に一度会う事を提案したんだ

最初は渋ってたけど「疲れてるでしょ?無理して会って負担になるより、週に1回ゆっくり話そう?ね?」と、電話やLINEはいつでもしてくれていいからと言ったら

「アオちゃんには敵わないな」

と苦笑いしながらも提案を受け入れてくれた



今日はその約束の日

尽八くんも部活はミーティングだけの日で私もバイトは休み
尽八くんの学校と私の家の中間位にある公園で待ち合わせている

時間通りに行けば尽八くんはもう来ていたけど同じ学校の女の子達に囲まれていた
なんとなく、近寄れなくて少し離れた所で待とうと思ったのに「アオちゃん!」と呼ばれてしまって

嬉しそうにしか見えない尽八くんの顔を見たら可愛いなと思って思わず手を振った

そして尽八くんが女の子達と別れて私の元へ来てくれた
女の子達が去っていく時に

「お姉さんかな?」「お姉さんいるって聞いたことあるし」「あー、お姉さんだよきっと」

なんて会話が聞こえてしまった

高校生の女の子からしたら私はやっぱり年上で姉にしか見えないのかと現実を突きつけられた気がした
そんな私を見て尽八くんは何かを察した様な顔をして

私の考えてることなんてきっと尽八くんはわかってるんだろうな
だけど尽八くんは少し押し黙った後に

「まだまだオレがアオちゃんに追いついていないと言う事だな」

と少し悲しそうな顔をして言うんだ

「早く追いつくから」

早く追いつくから待って欲しい

と切羽詰まった顔をするのはきっと私の前だけなんだろうな
きっとさっきの子達はこんな尽八くんは知らない

ふつふつと湧き上がる変な優越感

…ああ、きっと嫉妬してたんだ、あの子達に

どうひっくり返っても年齢差は縮まる事はない
だから羨ましかったんだろうな

きっとそういう部分で尽八くんの方がずっと苦しい思いをしてるんだ

もう何年も

そう考えたら凄く申し訳なく感じて、でも今はまだ堂々と尽八くんと付き合う勇気もなくて

でも切羽詰まった尽八くんの顔も切なくて

「うん。私も…もう少しまってね、ごめんね」

臆病者でごめん…と尽八くんのシャツの裾を掴めば、尽八くんは何とも言えない顔をして私の手を掴む

「オレはいくらでも待てる」

またあの真っ直ぐな目
思わず見とれてしまったら今度は目の前が尽八くんのシャツの色だけになった

「オレは待てるから…アオちゃんも待ってて欲しい。早く追いつくから」

抱きしめられたと気づいた時に動揺したけれど余裕のない声が耳を掠めた時に、見られたくないんだなと痛いほど伝わって

背中に手を回す勇気はまだなくて、そのままでいた私はずるい

尽八くんの気持ちを知ってて自分の気持ちも気づいてて、それでも待たせる私はずるい

だけど臆病な私は「お姉さん」とさっきの女の子達の声が頭から離れなくて

自信がなくて素直に尽八くんの胸に飛び込めない

だけど尽八くんが離れていくのは嫌だと思う私は本当にずるくて酷い

背中に手は回せなかったけど、やんわりと制服のシャツを掴めば尽八くんの腕の力が強まった

早く素直に飛び込める自信が欲しいと、尽八くんを手放したくないと色んな感情が入り混じりながらも抱きしめられている心地よさを忘れないように、目を閉じて尽八くんの胸に体を預けた








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