アオちゃんのバイト先に行けばアオちゃんが誰かと話をしているようだ

前に言っていた同じ大学の奴だったか…

アオちゃんが楽しそうに笑っていて、少し胸が痛む
楽しそうに笑う事はいい事だし嬉しく思う

だけどオレではない男にその笑顔を向けられると正直苦しい

気にしないように気にしないように
いつもそう言い聞かせてきた
小さい男にはなりたくなかった

なんとなくその男がいなくなるまで待ってから、店内に入る

「アオちゃん!」
「尽八くん、もう終わるよ」
「そうか。待ってるよ」
「うん」


今も時々こうしてアオちゃんのバイト先から家まで送る時がある
こうでもしないと中々2人で会えないのは今も変わらない

「さっきの奴は最近見かけるな」
「あ、うん。…この間ね、告白されたんだ」
「そうか。返事は?」


返事なんてアオちゃんは「断ったよ」って笑って言うに決まってる

そんな風に信じて疑わなかった


「うん。保留にしてある」
「保留?」
「いい人だから彼、優しくて。真面目に考えてる」

そうにこやかに話すアオちゃんを見て言葉に詰まる

年相応の恋愛と言うのがやはり理想なのか
どれだけアオちゃんを望んでもアオちゃんは結局遠くに行ってしまうものなのか

もう少し大人になるのを待ってと言った
それに頷いてくれた

だけど、人の気持ちなんてきっと流動的なのだろう
オレの執拗い恋心の方がもしかしたらおかしいのかもしれない

オレが好きだと言えば困ったような笑顔で笑うだけのアオちゃんが、あの男の前では普通に笑って話す
オレといる時は人目だって気にしながらだけど、あの男の時は違った

たった3年、その3年がこんなにも大きなものなのかと打ちひしがれる

もう縛るのはやめよう
ずっとオレがいるから普通に恋もできずいるのかもしれない

普通の恋とはなんだろうな

オレとだって普通の恋が出来たのでは
出来なかったのか
そんなことが浮かんでは消える

小さく息を吸って覚悟を決める

「そうか、優しい奴なら安心だな。アオちゃんには幸せになって欲しいと思ってる」

「尽八くん」

「オレの事はもう…今まで縛り付けてすまなかった」

幸せになと、髪に触れもう一度言って別れる

笑えていただろうか
こういう時くらい、かっこいい自分でありたいから

いつか思い返して貰った日が来た時に情けない顔だとかっこ悪いからな



その後、アオちゃんとその男が仲良さそうに歩いてるのを見かけた

手を繋いで楽しそうに幸せそうに

これで良かった、これで良かったんだ

オレも前を向いて行かねばな

インターハイに向けて忙しくなる
恋だ何だ悲しんでる暇はない
アオちゃんが元気の素だった部分はあるが、気落ちする素ではない

まえを向いてがむしゃらに自転車を漕ぐのが今はとても心地よかった




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