あの日を境にアオちゃんは吹っ切れたかのように今まででの苦しそうな、考えるような雰囲気が消えた
交際は順調だと思う

冬休みに実家に帰れば勉強もしつつアオちゃんと会う機会を増やした
こういう時、家が近いと有難いな…と思う


「お邪魔します」
「尽八くん上がって〜」

アオちゃんにそう言われ上がると、何時もはすぐに出てくるアオちゃんのお母さんがいない

「あれ?アオちゃん、おばさんは?」
「お父さんと旅行だよ」
「そうか」
「だから今日は気兼ねなく寛いでね」

おばさん達がいない…となると二人きりではないか
いつもいる人が居ないと落ち着かない気もする…というのは言い訳で

本当は色々意識してしまって落ち着かない

「尽八くん会いたかったよ」

なんて抱きついてくるアオちゃん
少し前まではこのように甘えてくるなんて想像も出来なかった

「昨日も会ったのに不思議なものだな。オレも会いたかった」

そう言えばアオちゃんは嬉しそうな顔をするから

可愛い、本当にどうしようもない

オレに会いたかったと言ってくれて、オレも会いたかったと言えば嬉しそうに笑う

なんて幸せなのだろうか

「アオちゃん、好きだよ。本当に可愛い」
「私も好きだよ、尽八くん」

我慢なんて出来ず、思い切り抱きしめてそのまま口付けた

何度も何度も口付ける
オレの服を掴みながら、必死についてくるアオちゃんが可愛くて堪らない

唇を離せばアオちゃんが「今日はずっと一緒に居てくれる?」なんて…

なんと言う殺し文句だと

「勿論」
「やった!ずっと一緒だね」

本当に、可愛すぎて苦しい位だ


事情を親に言えば「アオちゃんを1人にさせる方がいけない!さっさと行ってきなさい」と荷物と共に早々に追い出された

アオちゃんのご両親も、家の親も予めそのように話していたようで知らなかったのはオレだけだったようだ

「びっくりするかなぁ?って。おばさんにまだ言っちゃダメよって言われてたの。ごめんね」

「そうだったのか。いや、驚いたけど嬉しいから構わないよ」

小さい頃にお泊まりして以来

正直あの時も少し緊張していたな…と思い出す

のんびりとDVDを見たり話をしたり穏やかな時間を過ごして、アオちゃんの手料理をご馳走になったり正に至福の時とはこの事を言うのではないか

だけどアオちゃんがお風呂から出た時に急に心臓が高鳴った

これは不味い
大切に、大切にと思っても長年の想いはもう溢れて留まることを知らない

今、夜を共にすればきっと抑えられない…と思う

風呂で冬なのに冷水を浴びて心を落ち着かせようにも落ち着かなくて困ったものだ


別に布団を用意してある…事なんてなく
アオちゃんのベットに枕が2つ

これはもういよいよ無理かもしれない


言わずともアオちゃんは覚悟しているのか、何なのか今までにない位甘えてくるしどうしたものか

「アオちゃん、好きだよ」
「私も好き、ねぇキスして欲しい…です」

もう本当に敵わない

キスも止まらない、想いが止まらないのと同じかのように

柔らかい唇が温かい舌が可愛くて甘くて
赤く染まる頬も可愛いしもっといろんな顔が見たい
もっと触れたい、アオちゃんに触れたくて

アオちゃんには以前、恋人がいたからきっともう…なんて頭に過ぎる
しかし今、こうしていてくれるから関係ないと言い聞かせる

「アオちゃん。その…」
「キス以外の事していいよ」

覚悟はできてるから、とアオちゃんはふんわり笑う

「アオちゃんが好きだよ。その、オレは経験がないから…けど、精一杯大切にするから」

こんな事を言うのは情けなくて何となく恥ずかしい気持ちが隠せなくて上手く笑えていないかもしれない

結局嫉妬心も隠せない。以前の恋人への

「私も、私も経験ないから…初めてだから一緒だよ」
「ん?」
「処女だもん、私」

だから優しくしてね、なんてアオちゃんは笑う

そうか、そうだったのか
アオちゃんが初めてでなくともオレは関係ないと思っていたのに…やはり嬉しいもので

「ああ、精一杯優しくするよ。アオちゃん、好きだよ」


そうして口付ければもう止まらなかった


今日のことは忘れないように
口付けるのも抱きしめるのも触れるのも
全部全部焼きつけるように

想いも伝われとありったけの言葉にして

好きという事、可愛いと思ってる事

愛おしいという気持ち

ひとつも取りこぼしのないように言葉に紡ぐ

「アオちゃん好きだよ」
「尽八くんが好き、大好き!!」
「可愛い、本当に。アオちゃんが可愛くて愛おしくて堪らない。好きだよ」

ひとつになった時、アオちゃんが泣きながら「尽八くん、大好き。愛してる」なんて言うから

「オレも愛してる、アオちゃん…幸せ過ぎて苦しい位だ」

なんて思わず泣きそうになったのを堪えるのに必死だったなんて、アオちゃんは知ったら笑うだろうか




夜中にふと目を覚ませば腕の中にアオちゃんがいて、そっと髪を撫でればギュっと擦り寄ってくるから

そのまま額にキスを落としてもう一度腕に閉じ込めて目を閉じる

朝起きた時もアオちゃんが腕の中にいるんだと思うと幸せで眠れそうになくて苦笑い

しかし目を閉じて、アオちゃんの呼吸音と伝わる心拍が子守唄になったのかそのまま眠りに落ちる


「朝だよ、尽八くん」

目を開ければアオちゃんがいて

片思いの時、いつも朝にアオちゃんを想っていた事を思い出す

思い焦がれ恋焦がれていたアオちゃんがこうして居てくれる幸せを言葉にするなら何と言おうか

「おはよう、アオちゃん。よく眠れたか?」
「うん、ぐっすり!」
「そうか。良かったよ。アオちゃん、いい朝だな」
「うん」

本当に今までで1番いい朝だ
その意味をきっとアオちゃんは知らないけれどそれでいい

オレの傍で幸せそうに笑うアオちゃんが居るからそれでいいんだ






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