大学を卒業して働き始めて初めての夏
オレは以前から決意していた事を実行すべく動いていた
アオちゃんとはあれから平穏に仲良く過ごしている
22…もうじき23歳になるオレと25歳のアオちゃんはもう年齢差なんて気になる事もないだろう
しかし女の子が25歳となると違う事を気にするようになっているようで…
「大学の時の友達の結婚式素敵だったなぁ」
そう写真を見ながら話すアオちゃん
この間も出かけた時にショーウィンドウにあったドレスを眺めては「綺麗」と言葉を漏らしていた
別にだからどうだとアオちゃんは言う訳ではないが、そろそろそういう事を考え始める年齢だと姉は言っていた
オレはまだ社会人1年目で頼りないかもしれない
けれどずっと一緒にいるのには変わりないし、就職先に恵まれたから収入的には万が一アオちゃんが働かなくともその位養えるだろう
今日、頼んであった物を取りに行ってからその後はアオちゃんと夜に会う予定だ
「こちらでよろしかったでしょうか?」
「うむ。よく出来ているな。ありがとうございます」
「良かったです。綺麗にお包みしますね!」
その仕上がりに満足したオレは綺麗にラッピングされたそれを大事に持って車に乗り込んだ
それからアオちゃんの家まで迎えに行けば外にもうアオちゃんが待っていてくれた
「尽八くん!こんばんは」
「ああ」
「今日は何食べるの?」
「アオちゃん、何か食べたいものはあるか?」
「そうだなぁ…あそこのラーメンとチャーハンが食べたい…かも」
「久しぶりに食べたいな。そこに行こうか」
「うん!」
小さな頃から何度も行ってる地元の中華料理屋で
いつもチャーハンを頼むアオちゃんだけど、たまに天津飯を頼んでその中に入っているグリーンピースをオレの皿の中に入れていたのをふと思い出して懐かしい気持ちになった
なんとなく、今日はあの店に行きたいと言うと思ったんだ
何故だろうな
沢山食べて沢山話して
なんとなく、懐かしい場所巡りをする事になった
「春はここがシロツメ草ばっかりになったんだよね」
「ああ。冠をよく作ってたなアオちゃんは」
「うん。でも尽八くんの方が上手かったけどね作るの。でもさ、四葉のクローバー見つけてくれて手紙くれたの嬉しかったなぁ。クローバーじゃなくてくろーばになってて可愛かったなぁ」
「よく覚えてるなアオちゃん。そんな風に書いてたか…照れるものだな」
「まだちゃんと持ってるもん」
「え?」
ずっと知らなかった
アオちゃんはオレが今まで渡してたモノを全て残してくれていた事を
手紙も土産も、ボタンも…
もう何年前所ではないちょっとしたものばかりなのに
オレも取っていおいてある
けれどそれはアオちゃんが好きで恋心もずっとあったからで
アオちゃんは最初は違ったはず
オレとは違ったハズなのに
なのにそうやって大事に取っておいてくれた事実に心が揺れて苦しい位嬉しかったんだ
初めの頃の気持ちの形は違えど、大切にしていてくれたんだと思うとこんなにも幸せな事はない
そして今は同じ気持ちだから本当にオレは幸せ者だと思う
綺麗に包装してくれたアレは結局ポケットに忍ばせて渡すタイミングを図っていたが、ここだと思った
幼い頃遊んだこの場所
特別景色がいいとかそんな事もなく
今はシロツメ草も咲いていないけど
空を見上げれば美しい夏の星空
穏やかな風の音
夏だけど夜は涼しくて
そしてアオちゃんが好きだと愛おしいと何度も思ったけど改めて思った今
「アオちゃん」
「ん?」
「オレはアオちゃんが好きだよ」
「ふふ、知ってるよ」
「きっとこれからもそれは変わらない。もうアオちゃんに恋をして20年近くなるけど好きな気持ちは変わらず大きくなるばかりなんだ」
「うん、私も好きだよ。嬉しい」
『私がけっこんする時、こんな風に王子様がプロポーズしてくれるのかなぁ?』
『どんなふうにだ?』
『この絵本みたいにだよ。こうやって手をつないでけっこんしてくださいって言われるの』
『かっこいいな』
『かっこいいよね。でも尽八くんもこの王子様みたいにかっこよくなると思うよ。お顔がかわいいもん』
『かっこよくなったら、プロポーズするからな』
『うん、待ってるね』
どうしたら上手く言えるかと考えてたらふと、この時の事を思い出した
あの時からオレは本気だったと思う
初恋は実らない
そのジンクスみたいなものを経験するかと思った時もあったけれど、実った
そしてずっと恋焦がれてたアオちゃんと想いが通じ合って
これからも人生を共にしたい
傍にいて欲しい
アオちゃんの前に跪く
何が何だかわかってない顔をするアオちゃんに手を差し出した
「アオちゃん、オレはこれからもずっとアオちゃんと人生を共にしたいんだ。愛してるよ。アオちゃんオレと結婚して欲しい」
差し出した手の上にそっとアオちゃんが手を重ねる
アオちゃんは笑ってるような泣いてるようなそんな顔
「はい。喜んで。私も尽八くんと人生を共に過ごしたいです。…嬉しい」
そう言って泣き出したアオちゃんの涙を拭う余裕もなくオレはアオちゃんを抱きしめた
「幸せにするから。絶対に嬉し泣き以外はさせないよ。本当に…ありがとう」
幸せだ…と思わず呟けば
「私のセリフだよ。こんなにずっと想ってもらえて、大切にしてくれて、そんなの中々無いことなんだよ。ずっとありがとう。私は幸せしか貰ってないよ。私も幸せにするからね。ありがとう、大好き」
本当に、幸せすぎて目眩がする
アオちゃんに出会えて良かった
好きになって良かった
諦めかけた事もあるけれど、オレの執拗い恋心に悩んだ事もあったけど諦めなくて良かった
…けど結局、諦めるなんて無理な話だったんだ
これからも変わらない想いに誓いをかけて
そっと左手の薬指に用意していた指輪をはめたら
アオちゃんがオレの胸に飛び込んで
それを受け止めて今日も何度目かわからない想いを告げれば、そのままアオちゃんに口付けた
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