久しぶりにアオちゃんと顔を合わせた

恋人が出来たアオちゃん
幸せなんだろうと思うと嬉しい反面苦しかった

どうしてオレの手を取ってくれないと
朝起きていつもアオちゃんの顔が浮かぶ度にため息を吐いた


何年好きでも叶わぬものは叶わない
初恋は上手くいかないなんてよく言ったものだ

周りの女の子達はいい子ばかり
告白だって何度もされた

1度誰かと付き合ったらどうだと言われたが、そんな気も起きず

それでもばったりアオちゃんに会った時、彼氏と上手く言っていると聞いた瞬間「そろそろオレも次の恋をせねば」なんて思ったんだ

なのに、アオちゃんは急に嫌だ、と呟いて
そして堰を切ったように話し出す

好きだと、オレのことが好きだと

その瞬間心臓が高鳴った

落ち着かせて、きちんと話し合わねばと思ったのにアオちゃんはネガティブな言葉ばかり吐いて落ち着くどころがどんどん興奮して

そしてそのまま走り去ってしまった

追いかけようと思ったけど、アオちゃんとは今はきちんと話せないだろう
昔から見てるからわかるんだ


オレを好きだと言ってくれた
しかし彼氏がいる
無理やり奪ってしまおうかとか、殴られるのを覚悟で話に行こうかとか色んなことが頭を過る

数日たって少しは落ち着いたか…って時にアオちゃんの家に向かった

籠りきりなのとアオちゃんのお母さんが言う

部屋を開けると言ってもダメだと言われるだろうから、断りだけは一応入れてそのまま強引に開ける

少し窶れたアオちゃんはオレを見るなり泣き出した

彼氏とは別れたと
それでも色んなひとを振り回して最低だと

最低なもんか
オレだってカッコつけてなんかいられなかった

どうしてもアオちゃんしか好きになれない

笑顔を見て心が揺れるのも、涙を見て胸を締め付けられるのも抱きしめたいのもアオちゃんだけ

幸せでいて欲しい

だがそれはやっぱりオレの手で幸せにしたい
そんな風に思ってるんだ


やっと、頷いてくれた


好きだと、恋人になって欲しいと
その言葉にやっと頷いてくれた

オレだって狡い
こんな時に、こんな方法でアオちゃんを手に入れたのだから

それでもどうしても手に入れたかった人がオレの腕の中にいる

「キスをしてもいいだろうか」

頷くアオちゃんのほほに手を添える
涙をそっと拭ってそのまま口付けた

「尽八くんがファーストキスの相手だったら良かったのに…」

ごめんなさい

そう言って泣くアオちゃんに嫌な気はしなかった
何故なら

「アオちゃんは覚えてないと思うけど、ファーストキスの相手はオレだよ」


そう言えばアオちゃんは豆鉄砲を食らったような顔をした
無理もないあれは昔の話だから




あれはまだ幼い頃の話

「眠り姫」という本を姉に読んでもらったオレは幼心ながらにドキドキしたのを覚えている

アオちゃんと遊び約束をしていたオレはアオちゃんの家に行った
アオちゃんのお母さんが部屋にいるからと上がらせてくれて、アオちゃんの部屋に行けばアオちゃんは寝ていた

その寝顔が可愛いと思ったオレはマセていたと思う
しかし遊びたいから起こすものの中々起きてくれなくて

姉に読んでもらった眠り姫の話を思い出す
キスをすれば目が覚める…のくだりを思い出し、そのまま口付けたらアオちゃんが目を覚ました

「本当に、お姫さまみたいだ」
「おはよ…尽八くん。お姫さまごっこするの?じゃあ尽八くんは王子様ね」

なんか違う気もしたが気分よくお姫様ごっことやらをするアオちゃんは可愛かったんだ

アオちゃんを起こす時はキスをして起こしていた

「アオちゃんはオレが口付けると起きるんだぞ」
「そうなの!?尽八くんは本当の王子様みたいだね!これからも私の事起こしてね」

そう言ってアオちゃんはオレにキスしてくれた

因みに頬と唇に

大きくなるにつれて唇にキスはしなくなったが、起こす時はおデコにキスをしていた
本当は唇にしたかったが、もう幼子ではないし恋人にならなければしてはいけない事だとも理解していた

それでも幼い頃だったとしても、アオちゃんの初めての口付けはオレだと思っている

「幼い頃の話なのに情けないかもしれないが」
「情けなくなんかない!!」

嬉しいと抱きつくアオちゃん

あの彼と口付けをしているのは考えたらわかる事
もう大人だからそれ位は当たり前だろう
もしかしたらそれ以上のことも…

オレが全部アオちゃんの1番でいたくて、アオちゃんの全部を知りたかった

嫉妬心が渦巻くけれど、それでもやっと応えてくれたんだ
今からまた築いていけばいい





「…思い出した。思い出したよ」

いつも目を覚ませば、小さいのに王子様みたいな尽八くんが目の前にいて

その時だったんだね
ありがとう


そう言われて嬉しくて、少し泣きそうになった

オレのお姫様はアオちゃんしかいない

クサイと言われてもそうとしか思えない位、アオちゃんが愛おしくて仕方なかった



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