少しずつ、だけど確実に変わってきている
「おはようアオ」
「あ、おはよう隼人くん」
「今日はちゃんと眠れたか?」
「うん、ぐっすり!」
寝る前に隼人くんと電話したからかなぁ?
って呟いたアオが可愛くて頭を撫でれば擽ったそうな顔をして笑うんだ
その笑顔も少しずつ、変わって来てる
投げやりな事も殆ど言わなくなっていた
やっと、やっと手応えを感じて嬉しく思う
言葉が届くように、一つ一つきちんと伝えるように心がけて
普通の在り来りな言葉でも大切にして
「おはよう」も「また明日」も
「可愛い」も「好き」も
伝われと、少しでも届けと想いながら言葉を紡ぐ
安心出来る場所でいたいから、だから怖がらせないように気をつけて
そこまでする程か?なんて言われた
意地も多少はあったかもしれない
だけど、それでもやっぱり放っておけなかったんだ
彼女の中学の時の友達に声をかけられて、色々聞いたんだ
元々はよく笑って優しい子で、真っ直ぐだったと
「新開くんならアオを元に戻せるかもしれない…でも無理はしないでね、でも…私だけじゃどうにもならなくて」
そう言って泣いた彼女の友達も、オレと似た気持ちだった
アオの事、ちゃんとわかってる子がいる
その中にはオレもいるから
知れば知るほど好きなる
それは根本的に彼女がいい子で…とても魅力的だから
今日はアオをある所へ連れていった
「わぁ、可愛い!うさぎちゃんがいる」
「ウサ吉って言うんだ」
「ウサ吉!可愛い名前だね。でも、うさぎを飼ってるなんて知らなかった」
「ああ、実はな…」
ウサ吉がここに来るまでの経緯を話した
あまり話したくない話だけどそれでも何故か話さないと、と思ったんだ
上手く説明出来たかはわからないけど、アオは真剣に聞いてくれて
「そっか…辛かったね」
ウサ吉もだけど、隼人くんも
話してくれてありがとう、とオレの手を握って胸に頭を預ける
「隼人くんは…だから余計に優しいのかな」
その声が何だか弱々しくて、儚くて
空いてる方の手でアオを抱きしめた
手の力がギュッと少し強くなって、オレも優しく…でもわかるように握り返す
「ウサ吉も隼人くんに大切にされてきっと、ちゃんと幸せだよ」
やっぱりアオはとても優しいと思う
「アオも大切だよ、凄くな」
アオの顔を見てそう言えば、今までオレに向けてくれた笑顔の中で1番優しく笑ってくれたから
堪らなくなってもう一度抱きしめた
「あったかい」
そう呟いたアオに「あったかい」の意味を聞きたくなったけど、少しでも心があったかい気持ちになってくれていたらいいな、と
伝われ、と願いながらオレなりに優しい口調で「好きだよ」とアオに囁いた
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