大学生になってからこのカフェでバイトを始めて3年目

だいぶ慣れた私は、今日の閉店作業を店長に任された
って今月で何度目…

本当はシフトの時間が終わったらさっさと帰りたい
みんなが帰って行くのを横目に1人仕事をする

誰か手伝ってくれてもいいのに…皆、薄情…
でも帰りたい気持ちは痛い程わかるから何も言えない

「山田さん」

振り向けば少し前に入ってきた黒田くんがいて
皆帰ったと思ってた所に声をかけられたから驚いた

なんか、部活が忙しいとか何とかでたまにしか入ってないレアな子だ
そしてとてもカッコイイからお店の女の子とお客様から人気のある子

私も密かに憧れていたりするんだ

「あれ黒田くん、帰ったんじゃなかったの?」
「いや山田さんが残ってたから…手伝いますよ」
「え、悪いよ!色々忙しいんでしょ!?疲れてるでしょ?はやく帰って休みなよ」

カッコイイ上に優しいとか…反則だと思う
手伝ってくれたら嬉しいけど、忙しい彼に負担はかけたくない
こうやって時々シフト入ってくれるだけで有難い存在だから、それだけで充分だよ

「いーや、手伝います」
「悪いよ!本当にその気持だけで充分」
「大丈夫ですから。山田さんは頑固ですね。1度言ったら意見を曲げない頑固親父ですか。そこは素直に頷いて下さい」

頑固親父…彼は割と毒舌なのだろうか

それにしても黒田くんも頑固だよね
本人は気づいてないのかな?そんな所が可愛くて
もう素直にお願いしちゃおうかな

「ありがとう…本音を言うととても助かる」
「じゃあ、2人でさっさと終わらせましょう」

2人で作業したらとても早く進んで
黒田くんは要領が良くて仕事が早いから凄い
まだそんなにシフト入ってないのに本当に凄いや

最後の事務仕事がやっと終わったってタイミングで、黒田くんがどうぞ…と持ってきてくれたのはココアだった

「ありがとう、嬉しい!いれてくれたの?」
「まぁ、ハイ。疲れた時は糖分が必要って事で、どうぞ」
「ありがとう…美味しそう」
「最後までお疲れ様でした」
「黒田くんもお疲れ様、ありがとう」
「甘いの好きでしたよね?ホイップ多めにしてあります」
「うん、甘いの好き。…ってよく知ってたね?」

甘いのが好きだって、なんで知ってるの?
そんなに沢山一緒に仕事した事ある訳じゃないのに
不思議で仕方ない

「いや、その…いつも甘いの飲んでるなって思って……あーーもう、白状しますよ。いつも笑顔で接客してて、一生懸命で、人の仕事も文句言わずこなしてて。気になって目で追ってるウチに知っちまったんすよ、自然と」

ちょっと待って、えっと…

「黒田くんそんな事言われたら私、勘違いしちゃうよ」
「勘違いじゃないんで。そのまま受け止めて下さい」
「期待しちゃうよ?」
「その言葉にオレが期待しそうなんですけど」
「ど、どうぞ!!そのまま受け止めて下さい」
「ハハッ!じゃあ遠慮なくいい風には解釈するんで」

私こそいい風には解釈しちゃうよ
憧れの男の子にそんな風に言われたら…

「とりあえず、アオさんって呼んでもいいですか?」
「え、いいよ!」

私がそう言えば黒田くんはニッコリ笑った

「オレ、アオさんの事もっと知りたいし、オレの事も知って欲しいです」
「わ、私も知りたい!でも知られて幻滅されたらどうしよう…」
「大丈夫ですよ、頑張り屋で可愛い…って事はわかってるんで。多少の事じゃ幻滅しません」

もう、憧れの男の子から完全に好きな男の子だよ
彼にもそう思って貰えるように頑張ろう


…そんな事があった日から程なくして、黒田くんからハッキリと想いを告げられて晴れて恋人同士になった訳だけど


「アオさん、お疲れ様です」

相変わらず、最後まで残った時はこうやってココアをいれてくれる黒田くんに

黒田くんの優しい声に、言葉に笑顔に

どれだけ癒されているか黒田くんは知らないだろうな


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