万物流転 | ナノ
32.あめのひ2
グリフィンドール生が大広間で集団睡眠を取った翌日も、監督生は夜間の見回りに駆り出された。主席の監督生であるパーシー先輩は、目の下に隈を作った血色の悪い顔に、血走った目だけを鋭く光らせていた。そんな先輩に自ら近寄ろうとする者はおらず、唯一末の妹であるジニーが、そんなお兄さんを見て「今夜の見回りはやめにしたら?」と心配そうに言っていたが「僕がやらなきゃ、誰がやるんだ!」と厳めしい口調で言い返していた。

そんな厳重な見回りをするのが一週間くらい続いて、ついに私は寮対抗クディッチ杯の前日に倒れてしまった。手を付く暇もなく顔面からぶっ倒れた私は、口を切り鼻血を垂らしながらついぞやの夜のようにジョージに姫抱きにされて医務室へと運ばれたのである。

午後からも授業があるので、しぶしぶジョージは私のベッドを離れた。校医のマダム・ポンフリーは「いくら監督生と言えど、女の子がこんなになるまで見回りをさせるなんて!」とぷりぷり怒っていた。

今の私には、睡眠が必要だ!と私に温かくて甘いミルクを作ってくれたポンフリー女医はカーテンを引いて奥へと戻っていった。それを飲むと、約一週間分の睡魔が一斉に押し寄せて私は知らぬ間に眠りの世界へと旅立って行くのである。





髪を撫でられる感覚に目を覚ますと、ベッドの脇にあるスツールにはセドリックが座っていた。寝ぼけ眼で彼を見つめると、ぼやけた視界で彼がふわっと笑うのが分かった。

「おはよう、レイリ。ぐっすりだったね」
「お、はよ…ディゴリー、こんなところで何してるの?」
「なにって…僕は君のお見舞いに来たんだよ」

よく見てみると、彼の目の下にも薄らと隈が出来ており全体的に疲れたオーラを背負っているセドリックは、ベッドから起き上がろうとする私を紳士にも背中を支えてくれて、起き上がるのを手伝った。

「それに、僕のことは名前で呼んでって約束したじゃないか」
「あぁ、ごめん。忘れてたわ、セドリック」

私が名前を呼べば、満足そうに笑いそれからぽつぽつと夜間の見回りについての文句や不満を言い合った。彼も私と同じでハッフルパフの五年生の監督生である。仕事をしていて辛い気持ちや面倒な気持ちを共感し合える私達の話は、校医が私の夕食を持ってくるまで続いた。

「セドリック、夕飯は?」
「ここにくる前に済ませてきたよ」
「…あら、そう。それじゃあ、失礼して…いただきます」

手を合わせてから野菜のごろごろ入っているシチューを食べ始めると、じっとセドリックに見つめられた。「ねぇ、そんなに見られると、食べにくいわ」と言えば「ごめんごめん」と軽い口調で謝られた。ちょっと恥ずかしく思いながらも、お腹はへっているので、彼の存在を気にしないようにぱくぱく食べた。

20130817
title by MH+
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